2008年05月09日

池永陽「そして君の声が響く」

池永陽「そして君の声が響く」そして君の声が響く (集英社文庫 (い50-4))

池永陽の作品というとこれまで「走るジイサン」「コンビニ・ララバイ」「水の恋」の3作品を読んできたけれど、いつも青春とか夢とかそんな言葉に代表されるような瑞々しい感性のあふれた小説を書く人だなというのが、この作者に対する印象でした。

今回読んだ「そして君の声が響く」もまさに池永陽さんらしい作品。しかも主人公が就活を控えた大学生で、ボランティア先のフリースクールの生徒たちとの交流や恋が描かれるのですから、まさに“青春”という言葉に直球勝負です。

フリースクールに通う生徒たちなので、心に何かを抱えていることは確かなのだけれど、陰鬱な感じじゃないのが読んでいて重過ぎない…その微妙なさじ加減が私は好きです(不登校については、息子が中学時代にそうしたことを通過しているので、決して上っ面のきれいごとでは語れないことは体験済み)。

主人公が恋をした相手、美咲の負った傷はあまりに衝撃的でびっくりしたけれど、全篇を通じて、素直に共感しながら応援しつつ読めるストーリー。

それにしても、1950年生まれの作者がこんな若者たちの心に寄り添った作品が書けること、素敵だなと思います。

kyoko0707k at 00:38|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2008年05月06日

北森鴻「狐罠」

北森鴻「狐罠」狐罠 (講談社文庫)

店舗を持たないで骨董を商う“旗師”宇佐美陶子シリーズの第1弾。文庫で500ページの大作ながら、次々に起こる事件や登場人物の行く末から目が離せず、時を忘れて読んでしまいました。

骨董とか古美術などと呼ばれる世界にはからきし疎い私でも、そうした世界の内情を垣間見つつ、勉強させてもらいながら、ミステリーそのものを純粋に楽しむことができて、1粒で2度おいしいというような作品です。

陶子という人物が、凛として美しく(でも、どこか儚げなところもあって、そこがまた魅力なのですが)、彼女のよき相棒ともいえるカメラマンの硝子もまた魅力的。さらに、小説の最後での「え!」というどんでん返しのような趣向もあって、さすが香菜里屋シリーズの北森鴻の作品です。

でね、この作品の中にも、香菜里屋とマスターの工藤がほんの一場面出てくるあたりも、北森ファンとしてはたまりません。

ただいま、この陶子シリーズの第2弾、『狐闇』を読んでいるところです。明日からかなり仕事が忙しくなりそうなので、読むスピードが落ちそうですが、読み終わったらまたレビューをアップしたいと思います。



kyoko0707k at 22:54|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

柴田よしき「窓際の死神」

柴田よしき「窓際の死神」窓際の死神(アンクー) (新潮文庫 (し-50-4))

「今年は読書三昧のGWにしよう」と心に決めて、連休前に大量にアマゾンで本を購入し、読んでいる途中に気になる本が出てくるとさらに追加で発注するという按配。最終日の今日までに1日1.5冊〜2冊のペースで読み続け、至福のときが過ごせました。

ブログへのレビューが間に合わず、その中からの抜粋になっていますが、大好きな柴田よしきさんの本の中からは「窓際の死神(アンクー)」を。

冒頭にもあるように「死神の姿を見ると、自分か、その愛する人が死ぬという―」というフランス・ブルターニュ地方に伝わる死神をモチーフにした、連作中篇です。

近藤史恵さんの整体師シリーズ(といっていいのかな?)の3冊と同様、主人公は心に闇を抱えた女性。“島田”という人間に姿を変えた死神と出会ってしまったことによって、自分を見つめ直して強く生きていく様子が読んでいてとても共感できました。

誰でも心の中に持っているどろどろとした感情を、あまりに的確に突きつけられてしまうと、読んでいて辛く、読み進むのにパワーがいるけれど、そのあたりはさすが柴田よしきさん。鋭いところを突いているけれど、ちゃんと元気がでてくるようなストーリーになっています。

近藤史恵さんの3作品と、この柴田よしきさんの作品は、そういう意味でどこか共通点があるような…。女性はもちろんのこと、男性にも4冊まとめておすすめしたい2008年GWの思い出に残る作品群でした。



kyoko0707k at 15:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

近藤史恵「シェルター」

近藤史恵「シェルター」シェルター

「カナリヤは眠れない」「茨姫はたたかう」に続く、シリーズ3作目の「シェルター」も読了です。表紙に谷口幸一氏によるシリーズのメンバーが描かれているのですが、これまで自分で頭に描いてきた人物像とそんなにかけ離れていなくて、より一層、愛着が持てるような気がしました。

今回は前2作以上に、整体師の合田先生の助手をしている恵と歩という姉妹に隠された問題がクローズアップされて、そこにやはり心に問題を抱えた17歳の少女が関わって物語が展開していきます。

タイトルのシェルターとは一時の逃避場所。でも人間に必要なのはシェルターではなくて、待っていてくれる『人』や『家』なのだと気づかせてくれる作品。終章の手前で合田先生が語る、次の言葉が胸に響きます。


『他人を傷つけずにいられない人間はな、そんなことをせえへんでも生きられる人間よりも、ずっと不幸なんや。〜中略〜そいつらは、他人を傷つけているようで、自分を鬼みたいなもんに食わせているんや。ある日、自分のやってことを振り返ったとき、自分の中を鬼が食い荒らしていることに気づいて茫然とするか、もしくはすべてを鬼に食われてなにもなくなってしまうか、そのどちらしかあらへんねん』


それが学校での陰湿ないじめであれ、社会での○○ハラスメントと呼ばれるものであれ。

合田先生はこんなことも言っています。

『ぶっちゃけていえば、自分と何人かの友達だけ、自分のことを好きやったら、人生なんてうまいこと行くもんやで。おれはそう思っている』


読むほどに癒されるこのシリーズ。「シェルター」が刊行されたのは平成15年秋なので、そろそろ近藤史恵さんが4作目を書いてくださることを切に祈っています。



kyoko0707k at 14:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

奥野宣之「情報は1冊のノートにまとめなさい」

情報は1冊のノートにまとめなさい情報は1冊のノートにまとめなさい 100円でつくる万能「情報整理ノート」

日ごろ、手帳のほかにRollbahnのリングノートを愛用している私、「情報は1冊のノートにまとめなさい」というタイトルが心に響き、迷わず購入。いったいどこがベストセラーになっている理由なのだろうと一気読みしました。

うーん、すべてをまねするのは私には無理だし、ましてやノートに書いた情報すべてにタグをつけていって、パソコンで管理し、検索可能にするなどという方法は続きそうもなく…第一、タグをつけて検索しなければ見つからないほどの情報を、ノートに書き込むなんていうことがあるのだろうかが疑問です。

私のRollbahnの使い方も、奥野氏と同様、取材であれ、打ち合わせであれ、原稿のプロットであれ、思いついたいろいろなことであれ、カテゴリー分けをすることもなく、すべて時系列で次々に書いています。…が、所詮、私が同時にやっている仕事などはすべて把握できる程度の小さなものなので、「どこに書いたか見つけるのが大変!」ということはほとんどありません。

なので、同じテーマで行った取材のページに付箋をつけて、その付箋をたよりにキーワードなどを確認して原稿を書くという流れで大丈夫かなと。そういう意味では、「これは○○用」とか「これは会社用」などにせず、すべてをRollbahnで一元化している点では奥野方式に近いのかもしれません。あ、でも奥野氏はスケジュール管理も私でいう「Rollbahn」で行うことをすすめているので、その点はちょっと違うかも(私はアクションプランナーとRollbahnの2冊を常に持ち歩く方式なので)。

で、奥野氏の提唱するやり方でさっそく実行してみたのは、新聞の切り抜きなどを別のスクラップブックなどに貼らないで、いつも使っているノートに貼るということ。たまるばかりで整理できない切抜きが膨大にあるのだけれど、仕事関連についてはRollbahnに貼ると決めたら、無駄に切り抜くことがなくなったようです。

というのも、Rollbahnがあんまり分厚くなるのが嫌だからという単純な理由なのだけれど、貼ってとっておくほど大切な内容かどうかをその場で取捨選択するようになったのは、たぶんとてもいいことなのではないかなと。

あと、とにかく頭に浮かんだことや、起こった出来事などを一つのノートにどんどん書いておくというのは、私が愛読している『能率手帳の流儀』で野口氏が繰り返していっているのと同じことなんですよね。

「とにかく、手で書く。書いたらそのままにしないで、繰り返し読み返す…そこから何かが生まれる」これに尽きるのだと思いました。


★この本を読んで買ったもの…貼って剥がせるのり、強粘着の付箋、メンディングテープ。

kyoko0707k at 13:31|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2008年05月05日

歌野晶午「長い家の殺人」

歌野晶午「長い家の殺人」長い家の殺人 (講談社文庫 (う23-11))

あの「葉桜の季節に君を想うということ」の歌野晶午のデビュー作が、新装版として講談社文庫から出たことを知って、期待度100%で読みました。「葉桜〜」ほどの衝撃はないけれど、これがデビュー作ならその後の活躍はうなずけます。


この「長い家の殺人」には、冒頭に、作者からの「新装版刊行にあたって」というメッセージがあり、あとがきには歌野晶午を見出した島田荘司氏からの推薦の言葉があり…それを読むだけでも、作家がこの世にデビューし、小説がこの世に生まれることの奇跡のようなものを知ることができて興味深いなと思いました。


----<以下、若干のネタバレがあるかもしれないので注意!>----

プロローグを読んで、わかったつもりになっていて騙され、トリックがなかなか見破れなくて歯軋りし…(でもね、種明かしの場面の前に、私は「そうか!」とわかってしまったけれど。だいぶ後半になってから)


で、思うのは、「葉桜〜」にしても「長い家の殺人」にしても、この作者はタイトルにある意味で答えをつきつけているのだなと。

まだ、読んでいない作品がたくさんあるので、歌野晶午のミステリーを楽しみに読み続けようと思っています。


kyoko0707k at 18:15|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2008年05月04日

近藤史恵「カナリヤは眠れない」「茨姫はたたかう」

近藤史恵カナリヤ&茨姫カナリヤは眠れない (ノン・ポシェット)
茨姫はたたかう (祥伝社文庫)

デビュー作の「凍える島」に続いて、近藤史恵の「カナリヤは眠れない」と「茨姫はたたかう」を読みました。この2冊は、どこか風変わりな整体師と、心の奥に闇を持つ姉妹(整体師の助手)、週刊誌の記者小松崎が活躍するミステリー。

事件そのものの謎を追うというより、登場人物たちの掛け合いが絶妙で、読み終わって心が癒されて元気が出てくる小説です。

整体師の合田先生によって体のゆがみを治してもらった後、小松崎くんがつぶやく「たしかにあの首の痛みは、身体の悲鳴だったのだと思う」という言葉や、合田先生の「人間は生まれつき、まっすぐに生きるようになっています。歪められた心と身体が悲鳴を上げている、それが原因です」という言葉など、私自身が整体の先生には常々お世話になっているせいか、とても説得力があって、登場人物たちに自分を置き換えながら反省しつつ、元気をもらいながら読み進みました。

近藤史恵という作家が大阪生まれの大阪在住(しかも大阪芸術大学文芸学科卒業)という生粋の大阪人なので、舞台も関西、口調も関西弁のため、小説に独特のテンポがあります。先に読んだデビュー作よりはこちらのほうが私は断然好き。出合えてよかったなと思える作品でした。

このシリーズの3冊目はないのかと探したら、同じ祥伝社から単行本(前2作はどちらも文庫書き下ろし)で「シェルター」というのが出ていることがわかり、すぐに購入。昨日、届いたので読むのが楽しみです。



kyoko0707k at 11:28|PermalinkComments(0)TrackBack(0)