本のこと

2008年11月06日

あの「100文字レシピ」の続編を見て大学いもを作る!

100文字レシピおかわり。 (新潮文庫 か 39-2)
100文字レシピおかわり。 (新潮文庫 か 39-2)

今年の元日にヴィレッジヴァンカードで購入して以来、バイブルのようになっている川津幸子さんの「100文字レシピ」。先日、この続編が「100文字レシピおかわり」というタイトルで書店に並んでいるのを見つけ、即、購入しました。

あれもこれも参考になるレシピがいっぱいで、眺めているだけでも楽しいのですが、昨日はこの中から大学いもを作ってみました。さつまいもを生のまま低めの油で揚げるところまでは、いつも付け合わせの素揚げ(塩をふって食べるだけ)でやっているのだけれど、あの照りのある蜜の作り方がけっこう難しい…はずなのに、川津さんのレシピどおりに作るととても簡単。

黒ゴマをきらしていて、白ゴマだったのがちょっと残念でした。でも、息子も、接待で遅く帰った夫も、すごい勢いで食べていたので、たぶんおいしかったんだと思います。

大学芋

kyoko0707k at 10:10|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2008年05月09日

池永陽「そして君の声が響く」

池永陽「そして君の声が響く」そして君の声が響く (集英社文庫 (い50-4))

池永陽の作品というとこれまで「走るジイサン」「コンビニ・ララバイ」「水の恋」の3作品を読んできたけれど、いつも青春とか夢とかそんな言葉に代表されるような瑞々しい感性のあふれた小説を書く人だなというのが、この作者に対する印象でした。

今回読んだ「そして君の声が響く」もまさに池永陽さんらしい作品。しかも主人公が就活を控えた大学生で、ボランティア先のフリースクールの生徒たちとの交流や恋が描かれるのですから、まさに“青春”という言葉に直球勝負です。

フリースクールに通う生徒たちなので、心に何かを抱えていることは確かなのだけれど、陰鬱な感じじゃないのが読んでいて重過ぎない…その微妙なさじ加減が私は好きです(不登校については、息子が中学時代にそうしたことを通過しているので、決して上っ面のきれいごとでは語れないことは体験済み)。

主人公が恋をした相手、美咲の負った傷はあまりに衝撃的でびっくりしたけれど、全篇を通じて、素直に共感しながら応援しつつ読めるストーリー。

それにしても、1950年生まれの作者がこんな若者たちの心に寄り添った作品が書けること、素敵だなと思います。

kyoko0707k at 00:38|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2008年05月06日

北森鴻「狐罠」

北森鴻「狐罠」狐罠 (講談社文庫)

店舗を持たないで骨董を商う“旗師”宇佐美陶子シリーズの第1弾。文庫で500ページの大作ながら、次々に起こる事件や登場人物の行く末から目が離せず、時を忘れて読んでしまいました。

骨董とか古美術などと呼ばれる世界にはからきし疎い私でも、そうした世界の内情を垣間見つつ、勉強させてもらいながら、ミステリーそのものを純粋に楽しむことができて、1粒で2度おいしいというような作品です。

陶子という人物が、凛として美しく(でも、どこか儚げなところもあって、そこがまた魅力なのですが)、彼女のよき相棒ともいえるカメラマンの硝子もまた魅力的。さらに、小説の最後での「え!」というどんでん返しのような趣向もあって、さすが香菜里屋シリーズの北森鴻の作品です。

でね、この作品の中にも、香菜里屋とマスターの工藤がほんの一場面出てくるあたりも、北森ファンとしてはたまりません。

ただいま、この陶子シリーズの第2弾、『狐闇』を読んでいるところです。明日からかなり仕事が忙しくなりそうなので、読むスピードが落ちそうですが、読み終わったらまたレビューをアップしたいと思います。



kyoko0707k at 22:54|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

柴田よしき「窓際の死神」

柴田よしき「窓際の死神」窓際の死神(アンクー) (新潮文庫 (し-50-4))

「今年は読書三昧のGWにしよう」と心に決めて、連休前に大量にアマゾンで本を購入し、読んでいる途中に気になる本が出てくるとさらに追加で発注するという按配。最終日の今日までに1日1.5冊〜2冊のペースで読み続け、至福のときが過ごせました。

ブログへのレビューが間に合わず、その中からの抜粋になっていますが、大好きな柴田よしきさんの本の中からは「窓際の死神(アンクー)」を。

冒頭にもあるように「死神の姿を見ると、自分か、その愛する人が死ぬという―」というフランス・ブルターニュ地方に伝わる死神をモチーフにした、連作中篇です。

近藤史恵さんの整体師シリーズ(といっていいのかな?)の3冊と同様、主人公は心に闇を抱えた女性。“島田”という人間に姿を変えた死神と出会ってしまったことによって、自分を見つめ直して強く生きていく様子が読んでいてとても共感できました。

誰でも心の中に持っているどろどろとした感情を、あまりに的確に突きつけられてしまうと、読んでいて辛く、読み進むのにパワーがいるけれど、そのあたりはさすが柴田よしきさん。鋭いところを突いているけれど、ちゃんと元気がでてくるようなストーリーになっています。

近藤史恵さんの3作品と、この柴田よしきさんの作品は、そういう意味でどこか共通点があるような…。女性はもちろんのこと、男性にも4冊まとめておすすめしたい2008年GWの思い出に残る作品群でした。



kyoko0707k at 15:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

近藤史恵「シェルター」

近藤史恵「シェルター」シェルター

「カナリヤは眠れない」「茨姫はたたかう」に続く、シリーズ3作目の「シェルター」も読了です。表紙に谷口幸一氏によるシリーズのメンバーが描かれているのですが、これまで自分で頭に描いてきた人物像とそんなにかけ離れていなくて、より一層、愛着が持てるような気がしました。

今回は前2作以上に、整体師の合田先生の助手をしている恵と歩という姉妹に隠された問題がクローズアップされて、そこにやはり心に問題を抱えた17歳の少女が関わって物語が展開していきます。

タイトルのシェルターとは一時の逃避場所。でも人間に必要なのはシェルターではなくて、待っていてくれる『人』や『家』なのだと気づかせてくれる作品。終章の手前で合田先生が語る、次の言葉が胸に響きます。


『他人を傷つけずにいられない人間はな、そんなことをせえへんでも生きられる人間よりも、ずっと不幸なんや。〜中略〜そいつらは、他人を傷つけているようで、自分を鬼みたいなもんに食わせているんや。ある日、自分のやってことを振り返ったとき、自分の中を鬼が食い荒らしていることに気づいて茫然とするか、もしくはすべてを鬼に食われてなにもなくなってしまうか、そのどちらしかあらへんねん』


それが学校での陰湿ないじめであれ、社会での○○ハラスメントと呼ばれるものであれ。

合田先生はこんなことも言っています。

『ぶっちゃけていえば、自分と何人かの友達だけ、自分のことを好きやったら、人生なんてうまいこと行くもんやで。おれはそう思っている』


読むほどに癒されるこのシリーズ。「シェルター」が刊行されたのは平成15年秋なので、そろそろ近藤史恵さんが4作目を書いてくださることを切に祈っています。



kyoko0707k at 14:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

奥野宣之「情報は1冊のノートにまとめなさい」

情報は1冊のノートにまとめなさい情報は1冊のノートにまとめなさい 100円でつくる万能「情報整理ノート」

日ごろ、手帳のほかにRollbahnのリングノートを愛用している私、「情報は1冊のノートにまとめなさい」というタイトルが心に響き、迷わず購入。いったいどこがベストセラーになっている理由なのだろうと一気読みしました。

うーん、すべてをまねするのは私には無理だし、ましてやノートに書いた情報すべてにタグをつけていって、パソコンで管理し、検索可能にするなどという方法は続きそうもなく…第一、タグをつけて検索しなければ見つからないほどの情報を、ノートに書き込むなんていうことがあるのだろうかが疑問です。

私のRollbahnの使い方も、奥野氏と同様、取材であれ、打ち合わせであれ、原稿のプロットであれ、思いついたいろいろなことであれ、カテゴリー分けをすることもなく、すべて時系列で次々に書いています。…が、所詮、私が同時にやっている仕事などはすべて把握できる程度の小さなものなので、「どこに書いたか見つけるのが大変!」ということはほとんどありません。

なので、同じテーマで行った取材のページに付箋をつけて、その付箋をたよりにキーワードなどを確認して原稿を書くという流れで大丈夫かなと。そういう意味では、「これは○○用」とか「これは会社用」などにせず、すべてをRollbahnで一元化している点では奥野方式に近いのかもしれません。あ、でも奥野氏はスケジュール管理も私でいう「Rollbahn」で行うことをすすめているので、その点はちょっと違うかも(私はアクションプランナーとRollbahnの2冊を常に持ち歩く方式なので)。

で、奥野氏の提唱するやり方でさっそく実行してみたのは、新聞の切り抜きなどを別のスクラップブックなどに貼らないで、いつも使っているノートに貼るということ。たまるばかりで整理できない切抜きが膨大にあるのだけれど、仕事関連についてはRollbahnに貼ると決めたら、無駄に切り抜くことがなくなったようです。

というのも、Rollbahnがあんまり分厚くなるのが嫌だからという単純な理由なのだけれど、貼ってとっておくほど大切な内容かどうかをその場で取捨選択するようになったのは、たぶんとてもいいことなのではないかなと。

あと、とにかく頭に浮かんだことや、起こった出来事などを一つのノートにどんどん書いておくというのは、私が愛読している『能率手帳の流儀』で野口氏が繰り返していっているのと同じことなんですよね。

「とにかく、手で書く。書いたらそのままにしないで、繰り返し読み返す…そこから何かが生まれる」これに尽きるのだと思いました。


★この本を読んで買ったもの…貼って剥がせるのり、強粘着の付箋、メンディングテープ。

kyoko0707k at 13:31|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2008年05月05日

歌野晶午「長い家の殺人」

歌野晶午「長い家の殺人」長い家の殺人 (講談社文庫 (う23-11))

あの「葉桜の季節に君を想うということ」の歌野晶午のデビュー作が、新装版として講談社文庫から出たことを知って、期待度100%で読みました。「葉桜〜」ほどの衝撃はないけれど、これがデビュー作ならその後の活躍はうなずけます。


この「長い家の殺人」には、冒頭に、作者からの「新装版刊行にあたって」というメッセージがあり、あとがきには歌野晶午を見出した島田荘司氏からの推薦の言葉があり…それを読むだけでも、作家がこの世にデビューし、小説がこの世に生まれることの奇跡のようなものを知ることができて興味深いなと思いました。


----<以下、若干のネタバレがあるかもしれないので注意!>----

プロローグを読んで、わかったつもりになっていて騙され、トリックがなかなか見破れなくて歯軋りし…(でもね、種明かしの場面の前に、私は「そうか!」とわかってしまったけれど。だいぶ後半になってから)


で、思うのは、「葉桜〜」にしても「長い家の殺人」にしても、この作者はタイトルにある意味で答えをつきつけているのだなと。

まだ、読んでいない作品がたくさんあるので、歌野晶午のミステリーを楽しみに読み続けようと思っています。


kyoko0707k at 18:15|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2008年05月04日

近藤史恵「カナリヤは眠れない」「茨姫はたたかう」

近藤史恵カナリヤ&茨姫カナリヤは眠れない (ノン・ポシェット)
茨姫はたたかう (祥伝社文庫)

デビュー作の「凍える島」に続いて、近藤史恵の「カナリヤは眠れない」と「茨姫はたたかう」を読みました。この2冊は、どこか風変わりな整体師と、心の奥に闇を持つ姉妹(整体師の助手)、週刊誌の記者小松崎が活躍するミステリー。

事件そのものの謎を追うというより、登場人物たちの掛け合いが絶妙で、読み終わって心が癒されて元気が出てくる小説です。

整体師の合田先生によって体のゆがみを治してもらった後、小松崎くんがつぶやく「たしかにあの首の痛みは、身体の悲鳴だったのだと思う」という言葉や、合田先生の「人間は生まれつき、まっすぐに生きるようになっています。歪められた心と身体が悲鳴を上げている、それが原因です」という言葉など、私自身が整体の先生には常々お世話になっているせいか、とても説得力があって、登場人物たちに自分を置き換えながら反省しつつ、元気をもらいながら読み進みました。

近藤史恵という作家が大阪生まれの大阪在住(しかも大阪芸術大学文芸学科卒業)という生粋の大阪人なので、舞台も関西、口調も関西弁のため、小説に独特のテンポがあります。先に読んだデビュー作よりはこちらのほうが私は断然好き。出合えてよかったなと思える作品でした。

このシリーズの3冊目はないのかと探したら、同じ祥伝社から単行本(前2作はどちらも文庫書き下ろし)で「シェルター」というのが出ていることがわかり、すぐに購入。昨日、届いたので読むのが楽しみです。



kyoko0707k at 11:28|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2008年04月30日

我孫子武丸「殺戮にいたる病」

殺戮にいたる病殺戮にいたる病 (講談社文庫)

16年も前に書かれ、叙述ミステリーの最高峰として名高い、我孫子武丸の「殺戮にいたる病」…前々から読んでみようと思いつつ、敬遠していたのですが、ついに読了。読み始めたらノンストップでした。しかも見事に騙されたというか、読み終わって、最初からページを追ったのは、あの「葉桜の季節に君を想うということ」以来でしょうか。

猟奇的殺人が題材で、しかもかなりリアルな表現の連続なので、女性に限らず、この本を受け付けない人もいるかもしれませんし、決して読み終わって元気の出る小説ではありませんが、ミステリー好きの人なら、「そうきたか!」と愕然とすること請け合いです。

笠井潔氏による解説を読んでみて、さらに納得感が増すという点でも、これまでに読んだ小説の中で3本指に入るかも。1980年代〜幼女連続殺人の宮崎事件や、金属バット事件など〜の時代背景の中で、どこかゆがんだ家族の問題をあぶりだしていて考えさせられます。

でも、16年前では、「猟奇的殺人」だったかもしれないけれど、もしも今、本当にこんな事件が起きたとしても、「そういうこともあるかもしれない」と受け入れてしまうほどに、今の社会はますます病んでいるようにも思います。

ちなみにこの我孫子武丸という人は、一時期、息子や夫が夢中になってやっていた「かまいたちの夜」というゲームの原作者なのですね。私はテトリスくらいしかゲームができないけれど、「かまいたちの夜」だけは、やっているところを端で見ていて怖くて怖くて仕方なかったことを思い出します。

…この「殺戮にいたる病」の文庫の裏表紙に「衝撃のホラー」と書いてあるだけあって、我孫子氏はこうした世界を描くのが巧いのですね。この本はホラーであり、本格的な推理小説でもあると思います。

kyoko0707k at 14:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2008年04月22日

近藤史恵「凍える島」

凍える島凍える島 (創元推理文庫)

文庫本の帯の文言にひかれて手にした近藤史恵の「凍える島」。心の機微とか、感性とか、そんな言葉に弱い私です。

何といっても、私自身が理論的なものの考え方よりは、心に響いたかどうか快く感じられたかどうかということで物事を判断してしまうタイプなので仕方ありません。だからものすごい感激屋で、そのかわりお世辞が言えなくて感情が顔にすぐに出てしまう。いいと思ったものとそうでないものとの落差が激しいです。あまりに直感的に動くので、右脳タイプの典型ともよく言われるけれど、単に大人になりきれていないだけのような気もします。

本の話から脱線してしまいました。この「凍える島」は近藤史恵さんのデビュー作だそうで、ずいぶん前の作品ですが、孤島における密室&連続殺人というミステリーなので、時代背景のようなものがあまり関係なく、違和感なく読めます。

もし、気になる人がいるとしたら、まるで太宰治の作品のように「スゥプ」「ボォト」と、音引きを小文字のカタカナで書いていることでしょうか。登場人物が詩人だったりするところからみても、作者自身が日本語に独特のこだわりというか美学をもっている人なのではないかと思います。

で、帯の文言。かなり後半になるまで「心の機微」だとか「感性」ということは意識しないで、登場人物と一緒になって連続殺人を怖がりながら読んでいたのですが、そういうことだったのか...ということがわかる段になって、近藤史恵が感性の作家とよばれるゆえんに納得させられます。

もう少しほかの作品も読んでみたいと思って、アマゾンで何冊か注文したので、読んだらまた紹介します。




kyoko0707k at 15:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2008年04月16日

北森 鴻「香菜里屋」シリーズ4冊

北森鴻「香菜里屋」シリーズ花の下にて春死なむ (講談社文庫)

ずっと紹介したいと思っていて、なかなかここに書けないままでいたのが北森鴻の短編連作集「香菜里屋」シリーズ。「花の下にて春死なむ」「桜宵」「蛍坂」「香菜里屋を知っていますか」の全4冊です。3冊までは文庫を買って、シリーズの最後になる4冊目は文庫化が待てずに単行本を買いました。

このシリーズは「香菜里屋(かなりや)」というビアバーを舞台に、マスターの工藤が事件を解決していくミステリーなのですが、はっきり言ってミステリーを楽しみいたいから読むのではなく、そこに登場するお料理が魅力なので読んでしまうという本。

もちろんミステリーそのものも読む価値はあるけれど、たまに凝りすぎてしまっていて、すんなり読み込めないときもあるのが少々難点。ただし、それを抜きにしても、とにかく出てくる料理、マスターの雰囲気や会話、アルコール度数の違う4種類のビールのことなど、お腹が空いているときに読むのはご法度というくらい魅力的です。

この「香菜里屋」は、どこか柴田よしきの「ふたたびの虹」に出てくる「ばんざい屋」にも似ていて、一方がビアバーで、男性のマスター、「ばんざい屋」は日本料理系のお惣菜とお酒を出す、小料理屋というところは違うけれど、ミステリー仕立てのところも同じだし、桜をテーマにした話は、題材そのものも似た話が出てきます。

香菜里屋とか、ばんさい屋みたいなお店を開くことができたら本当に素敵。知る人ぞ知る小さな小さなお店で、ひっそり営業しているけれど、お客様とは仲良しで、「お料理は私に任せてね」という感じでやっていけたらいいでしょうねぇ。夢のまた夢のお話だけれど。


kyoko0707k at 12:24|PermalinkComments(6)TrackBack(0)

2008年03月08日

「B型自分の説明書」

B型自分の説明書
B型自分の説明書

何やら人気の本らしく、「重版予約」というのをしておいてたところ、ついこの間ようやく届いた「B型自分の説明書」。

何を隠そう、私もB型です。血液型診断なんて日本人しか信じていない、何の根拠もないものだと言う人もいるけれど、私はけっこう信じているほう。

それでね、読んでみたら、もうあてはまるところがあまりにも多くて(特に前半の「基本操作」のところ)びっくり。

例えば、こんなところ…

□「変」だと言われるとなんだかウレしい。
□気になると即行動。
□その時の行動力はすさまじい。
□だけど、興味ないとどーでもいい。
□突然、何かしでかす。
□自分論がめじろおし。

〜中略〜

□自分がわからなくて迷子になる。
□それでぐるぐるする。
□でもめんどくさくなって「やーめた」ってなる。
□そしてまた迷子になる。という繰り返し。

↑全部、あてはまると思います、私。

あ、この本は、□にチェックを入れて「これが私の説明書です」というのを作り上げるという体裁になっています。夫は「O型自分の説明書」も買っておいてと言うけれど、「O型用」の説明書はないと思うのだけれど。世間ではB型への風当たりが強いのでこんな本ができたみたいです。

最後にこんなことが書いてありました。

 自分をうまく説明できないB型の、
 B型のことをちゃんと知りたい誰かの、
 少しでもお手伝いができたなら。

私のまわりのB型さん、誰かいますか?



kyoko0707k at 16:44|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2008年03月02日

私のバイブル「100文字レシピ」

100文字レシピ100文字レシピ (新潮文庫)
今年の初めに買って以来、バイブルのように大事にしている料理本が、川津幸子さんの「100文字レシピ」。これ、文庫本なのに写真がとてもきれいで、どの料理も作ってみようと思わせるものばかり。コンパクトだから、ベッドに持ち込んで明日のメニューを考えながらパラパラとめくることも度々です。

でも、通常は、上の写真のようにキッチンの壁にクリップではさんで吊るしてあります。で、この中から何か作ろうと思うときにはページを開いて、クリップを見開きの真ん中のところで留めて、確認しながら作業をするというわけ。

たった100文字で表されたレシピは、簡単なのにどれもおいしくて、しかもアレンジすることで“わが家流”にできるところも◎。

実は、これは「ヴィレッジヴァンカード」で買ったもの。あそこって、店員さんのコメントが手書きでいろいろ書いてあってとても楽しくて、ちょうど料理本ばかりを集めたコーナーに横並びに5冊も目立つように並べてあったので、思わず手にとってしまいました。普通の書店だったら、この本に出会えなかったかも。提案型&遊園地みたいな書店、好きです。


kyoko0707k at 10:48|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2008年03月01日

理論と感性と、そしてこれから。

激闘の2月最終週が終わりました! 徹夜徹夜の後に制作に出して、その後のデザイン確認&修正作業&再確認も先ほど終わり、ほっと一息。

別件の取材を終えて20時に帰宅⇒服も着替えずに確認作業⇒22時に終了⇒ごはんの支度(金曜日なのでパスタを。でも今日は3種類+サラダで終了)⇒23時15分:修正の連絡⇒再度確認⇒23時45分〜0時15分:電話で最終確認&今後の企画の詰め

あー、今週も終わったなあという感じ。編集者のY氏とも最初のやりとりから4か月を過ぎ(出会いからは半年)、納得のいくまで話をし続けていくうちに、ずいぶん気心が知れてきて、仕事がしやすくなりました。深夜に胃痛で目が覚めて、その後何時間も眠れないという毎日、歩いていても電車に乗っていてもこれでいいのかなあと思い悩む毎日が続いていたりしたけれど、決してあきらめずに自分の思いを伝えること、考え続けてきたことは、無駄ではなかったのだなあと思います。

続きを読む

kyoko0707k at 02:41|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年11月08日

奥田英朗「サウスバウンド」

サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)

サウスバウンド 下 (角川文庫 お 56-2)

「サウスバウンド」―豊川悦司主演の映画で、この本のタイトルを知っている人のほうが多いかもしれないけれど、「とにかく、本を買って読んでみて!」と声を大にして言いたい直木賞作家・奥田英朗の傑作です。

文庫だと上下2巻のこの作品。第一部にあたる、上巻では元過激派のお父さんを持つ、小6の二郎、小4の妹、そして喫茶店を営むお母さん…の東京での暮らしが丁寧に書かれています。二郎の学校での問題や、過激派がらみの事件、これまでずっといないと思っていた母方のおじいちゃん・おばあちゃんのこと。訳ありの恋愛をしているらしいお姉さんのこと…

一つ一つのエピソードにぐいぐい引き込まれているうちに、かなりの厚さの上巻が終わり、沖縄の離島での生活を綴る下巻へ。いやはや泣かせどころあり、吹き出してしまうところあり、しみじみと考えさせられるところありで、本当に読み応えがある本でした。

実は、この本があまりにおもしろかったし、お父さん役がトヨエツっていうのもはずしていない感じがしたので、封切後すぐに映画も観てきているのですが、映画は東京の部分をかなり割愛していて、一気に沖縄へ。しかも、電気や水道さえない暮らしぶりのところもあんまり描き込まれていないので、原作を読まずに映画を観た人には、何のことやら話の筋がわからなかったのではと思います。

話のクライマックスは沖縄にあるのだけれど、そこでの話がおもしろいのは、東京での暮らしぶりを沖縄部分の2倍くらい割いて書き込んでいるからなんですけどね。たった2時間でこれだけの長編を映画にするのはやっぱり無理があるのでしょうね。

なので、映画を観て、もしかしてがっかりした人も原作をぜひ読んでほしいです。

*ちなみに、映画で二郎を演じた田辺修斗くん、なかなかいい子です。これから活躍するのではないかと期待度大。それと、おまわりさん役の松山ケンイチ…原作のイメージとあまりにぴったりなので感激しました。芸達者な役者さんですね。


kyoko0707k at 15:33|PermalinkComments(5)TrackBack(2)

2007年10月29日

「能率手帳の流儀」と「佐藤可士和の超整理術」

能率手帳の流儀&佐藤可士和の超整理術最近、本をすごい勢いで買っています。小説(こちらは文庫)はもちろんのこと、仕事に役立ちそうな本とか日々の暮らしに役立ちそうな本とか、雑誌とか…。この夏はあまりに本を読まなかったので、その反動かもしれません。

ちょっと読んでみて!と紹介したい小説がたくさんあるのですが、まずはこの2冊から。

「佐藤可士和の超整理術」は、言わずと知れたベストセラー。装丁も自分で手がけたというこの真っ白な本が書店に積まれていると、かなり目立ちます。で、私も思わず手にとってしまい、「仕事を取り巻く環境がみるみる快適になっていくのが実感できるはず」という帯の言葉に惹かれて買ってしまいました。

佐藤氏もLAMYを愛用していることにへぇーと思い、まずはカバンの中身を整理しなさいというあたりに「はい、そうします」と反省し、仕事をする場合クライアントの思いを整理することが大切という言葉に、ふむふむと思ったのですが、「超整理術」というタイトルほどのインパクトには欠けたように思いました。いや、単に私の受け皿が足りなくて、奥深いところまで読みきれていないのかもしれませんが。

「能率手帳の流儀」は、日本能率協会マネジメントセンター代表取締役会長の野口晴巳氏の著作。この本には、巻末に能率手帳のページ構成が載っているだけで、「活用術」の本にありがちな図版はいっさい出てきません。けれども、とてもわかりやすくて、共感できる点がいっぱいあって、「読んでよかった!」と素直に思える1冊でした。

私が使っているのは、佐々木かをりさんが自ら使い、自社のサイトで販売をしているアクションプランナーですが、佐々木さんが提唱する手帳術よりも、野口氏の言っているやり方のほうが、私に合っているように思います。

佐々木さんは、手帳を使うときの姿勢が未来に向かっています。あの案件とこの案件を成功させるには、先々の時間をどのようにマネジメントしていくかが大切なのだと。そして、それに向かってまい進していくことだと。だから、佐々木さんは「時間活用管理術」のような言葉を多用しています。

一方、野口氏は、手帳というのは過去を振り返って反省したり、考えたりすることが一番大切なのだと。だから、毎朝、昨日の出来事を振り返って、ちょっとしたことでもいいから手帳に書いておきなさいと提唱しています。手帳にはスケジュールを書いておくだけではないのですよと。

「書く」ことは、考えること。「振り返る」ことは、未来に向かうこと。

この考え方、いいなあと思いました。私は、佐々木さんのようにバリバリに仕事をしていくタイプではないので、先へ先へと少しの時間も無駄にしないでタイムマネジメントをしていくというやり方だと、心身ともに疲弊してしまうのだと思います。

だから、一歩進んでは振り返り、反省し、また少し進むことを許してくれるような「能率手帳の流儀」の穏やかな語り口調にはとても安心感がありました。

でも、決して野口氏がのんびりと毎日をおくっていたわけではなく、挫折感を味わうことがあったりしながらも、常に前進されていた方なんですよね。だって、代表取締役会長まで務められている方なのですから。

いずれにしても手帳にはいろいろな使い方があって、どれが正解ということもないのでしょう。みんな自分に合った使い方を探しているので、手帳術のような本が人気なのでしょうね。

私はアクションプランナーを来年も使う予定だけれど、その使い方は“能率手帳の流儀”でいきたいなと思います。

----
P.S.
ちなみに、この「能率手帳の流儀」のことは、LiberaJoyさんのブログで知りました。こちらにもとてもいいことが書いてあるので、ぜひ読んでみてください。
>>>Pusupin Diary 「手帳シーズン開幕」


kyoko0707k at 10:14|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2007年05月19日

歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」

葉桜の季節に君を想うということ


「2004年版このミス第1位」のほか、各賞を受賞した話題のミステリー、歌野晶午の「葉桜の季節に君を想うということ」がようやく文庫化! 待ちに待った作品だったので、発売を知り、本屋さんに飛び込んで買いました。

ネタバレになってしまうといけないので、詳細は書けませんが、ほほー、ふふーん、へぇー、なるほどー。最後まで読み終わる前に400ページを過ぎたあたりで、最初から読み直し、最後まで読んだのにまた読み直し、一つ一つに納得した次第です。

賞をとったのに、この作品は賛否というか好き嫌いの評価が分かれるようですが、私はとても好きです。驚かされたし、おもしろかったし、単に「やられた!」感があるだけでなく、これから生きる勇気と元気を与えてくれる作品だと思います。

ミステリーのトリックとか、これまでにこうした作品があったかどうかとか、そんなことにこだわる人はイチャモンをつけたくなることもあるのかもしれませんが、純粋にエンターテインメントとして楽しみ、歌野氏が作品の主題として訴えかけているメッセージに共感するという読み方をしてもいいのではと。

うーん、これ以上書けないのが辛い! 読んだ人と話すしかないのは、内容は違うけれど荻原浩の「噂」にも通じるかも。まだ、読んでいない方、ぜひ!

kyoko0707k at 14:43|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2007年05月02日

このノートに何を書く?

notebooks2昨日、御茶ノ水の丸善に立ち寄って本と文房具をあれやこれやと見てまわること1時間半。こういう時間は本当に楽しいです。

最近は読んだ本のことをなかなかここに紹介できていないのだけれど、2日に1冊ペースでいろいろと読んでいます。最近集中して呼んでいるのは、北森 鴻と池永 陽の作品。昨日も電車の中で池永 陽の「走るジイサン」(第11回すばる新人賞受賞作品)を読み、感激のあまり思わず涙がホロリ。それで、丸善でも同じく池永陽の「水の恋」を購入してしまいました。

写真は、文具コーナーで衝動買いしたノート3冊。B5くらいに見えるかもしれないけれどA5の小さなノートです。表紙(裏表紙)の写真がきれいなのも気に入った理由だけれど、中の罫線が薄いカーキの点線で、下のほうにスタンプみたいなマークもついていて、技あり…だったので。1冊120円(126円)だったし。

でも、このノートに何を書いたらいいんだろう?って、思案中なんです。この間のスクラップノートみたいに、買ってから何年も経って、突然使い途がきまるノートもあるから、たまに手に取って眺めているだけでもいいのかもしれません。

読んだ本の名前と日付とちょっとした感想を書いておく、読書ノートなんかもいいかも。

走るジイサン




kyoko0707k at 13:35|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年04月18日

枡野浩一の短歌集「ハッピーロンリーウォーリーソング」

ハッピーロンリーウォーリーソング
自分では作れないのに短歌集を読むのが好きです。五七五七七のリズム、短い言葉の中に込められた真実のようなもの…

俵万智、林あまり、佐藤真由美といった現代女流歌人のほか、枡野浩一の鋭さにも敬服します。この「ハッピーロンリーウォーリーソング」は、前半がピンク、後半がブルーという「!」という装丁になっていて、それぞれの短歌に添えられた写真も印象的です。


結果より過程が大事「カルピス」と「ホットカルピス」

四百字ぶんの升目をうめるにも足らぬ三百六十五日



私はこの2つの歌が好きなのだけれど、この間、長男に読ませてみたら「僕はこれが好き」とのこと。


前向きになれと言われて前向きになれるのならば悩みはしない

無駄だろう?意味ないだろう?馬鹿だろう?今さらだろう?でもやるんだよ!



君の心模様が何となく分かるような気がしたよ…



kyoko0707k at 18:08|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年04月12日

あなたの好きな色は何ですか?

私の好きな色500
今日は仕事で久しぶりに桜木町&高島町周辺を歩きました。横浜の情報誌の仕事をしていたときに、カメラマン氏と一緒に足が棒になるくらい歩いたことを思い出しました。『足で稼ぐライター』とカメラマン氏に称され、取材のたびに「何か運動やってました?」と聞かれていたのが懐かしい! 

さて、待ち合わせの時間より早く着いてしまったので、駅構内の書店に入って思わず買ってしまったのが文春文庫PLUSから出たばかりの「私の好きな色500」という本。

昨年末から2月くらいまで、ある雑誌の特集を3つ担当したのだけれど、(量を減らしてはいるけれど、いまだ、ライターの仕事も継続中です)、6ページものの企画3つのうち、1つが「色彩」についてでした。

そんなこともあって、『色の持つ力』のようなものにとても興味を持っていて、何となく手に取ったのですが、この本は、巻頭に示してある500の色の中から自分が好きな色を選ぶことで、その人の性格を診断してしまうという内容なんです。

500の色のそれぞれに「摘みたてのブルーベリー」だの「清少納言のあこがれ」なんていう名前がつけられているので、それを読んでいるだけでも楽しいのだけれど…

でね、私が選んだのは何だと思います? 「鮮やかなサボテンの花」をセレクトして、性格のところを見てみたら…

うふふ。興味のある方は、この本の「鮮やかなサボテンの花」のところをご覧くださいませ。



kyoko0707k at 00:27|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年01月23日

「メトロポリターナ」のショートストーリー

メトロポリターナ東京メトロの主要駅に置いてあるフリーペーパー「メトロポリターナ」の1月号は、真っ赤な表紙が印象的。特集のタイトルも「ようこそ赤色の旅へ」。

思わず手にして、移動中の電車の中でパラパラとめくり、拾い読みをしていた中で、「サウンドスリープ」(安眠・熟睡)というタイトルのショートストーリーがとても心に残りました。作者は「ふじきみつ彦」という方。谷口巧氏による写真も印象的です。

たぶん20代後半か30代前半のカップル(結婚はしていないらしい)の、ほんの小さな、でも心温まるエピソードが書かれています。

サウンドスリープ

もう、専用ラックに積まれていた1月号、みんな捌けてしまったでしょうか? もしもこの真っ赤な冊子を見かけたら、ぜひ読んでみてください。おすすめです。

kyoko0707k at 00:21|PermalinkComments(11)TrackBack(0)

2006年08月07日

敬愛する作家「柴田よしき」さんからコメントが!

柴田よしき<山内練&麻生龍太郎>柴田よしきさんのファンで、このブログでも数々の柴田作品の紹介をしていますが、つい先日書いた「聖なる黒夜」のブログに、柴田さんご自身からコメントを頂戴し、大変感激しています。

まさか、ご本人の目に留まるとは思いませんで、“作家の筆力のせい”とか、偉そうなことを書いてしまい、恐縮しているものの、この作品の着想はいつのものだったのかという私の疑問にも答えてくださり、本当に感謝、感謝です。なんと、RIKOで横溝正史賞をもらい、その受賞第1作として書き始めたという経緯もあったのですね。でも、こちらを仕上げるのは機が熟しておらず、「聖母の深き淵」を先に書き上げたとのこと。うーん、こんな大切な話をうかがうことができて、光栄です。

このあたり、上の画像にあるような作品群を読まないと、ちょっとマニアチックでわかりづらいかもしれませんが、興味を持ったかたは、「RIKO-女神の永遠-」から、ぜひお読みください。男性にも女性にも読んでほしい作品です。

さらに、今月から山内練と麻生龍太郎が登場する新シリーズが携帯サイトで登場するという情報までいただいたので、さっき、さっそく入会してしまいました(FOMAじゃないのでパケ放題が使えないのがちょっと痛いんですが…これを機会に機種変しましょうかね)。

とにかく、また練たちに会えるのが楽しみです!

【文庫読み放題】http://www.kadokawa.co.jp/sp/200308-06/

【柴田よしきさんHP】http://www.shibatay.com/

kyoko0707k at 15:06|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2006年08月02日

齋藤孝「発想力」

発想力

「声に出て読みたい日本語」「三色ボールペンで読む日本語」でおなじみの齋藤孝さんの、とても楽しいエッセイです。エッセイなんていうと怒られてしまうかもしれないけれど、タイトルの「発想力」というお堅い言葉とは裏腹に、どんどん気軽に読めて、なんとなく元気が出てきて、ニコリ、クスリと笑える本なんです。

まあ、「三色ボールペンで本に線を引きながら読んでいきましょう」という提案をすること自体が、とてもユニークな発想だし、かつ理にかなっているから、多くの人に支持されているのだと思いますが、この本に載っている数々のアイデアを読むと、齋藤さんという方は、常に脳がものすごい速さで回転していて、いつも何かを考えているのだなあと、本当に感心させられます。

たとえば、「就職難におみそシステムの導入を」という章。おみそシステムって何?という方、これは子どもの頃、大きい人たちと一緒におちびちゃんが鬼ごっこやカンけりをして遊ぶときに、絶対鬼にならない「おみそ」っていうのがあったでしょう? あれです。

つまりね、昔は企業は新入社員に“即戦力”をそれほど求めず、好きなことをのびのびとやっていた活力のある学生を求めていた。だから、入社してしばらくは、給料をもらいながら仕事を覚える…これって「おみそシステム」じゃないかと。

即戦力ばかり求めずに、この昔ながらの方法を取り入れるという発想で、学生を採用することで、荒削りだが器の大きい人物を入社させ、育て上げることができるのではないか…というのが齋藤氏の提案なんです。

こんなふうに、よく読むと時代を分析した、深い内容のことが書いてあるのに、とにかく文章がおもしろいのですいすい読めます。私は某短大の英文科卒だけれど、本当は大学の国文科に行きたかったな…なんて今さらのように思うことがあるのですが、できれば、こんな齋藤先生のいるゼミで勉強したいです。

そうそう、私は今の人生を何も後悔していないし、とてもおもしろい展開だと思っているけれど、もしも生まれ変わって好きなものを選べるとしたら、中学か高校の国語の先生になりたいなと思います(これはね、北村薫の“時の三部作”の1作目、「スキップ」を読んで以来の、私の願いなんです)。

kyoko0707k at 13:17|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年08月01日

奥田英朗「イン・ザ・プール」

イン・ザ・プール

直木賞作家、奥田英朗の作品を初めて読みました。「イン・ザ・プール」。どうやら、主人公の精神科医、伊良部が、直木賞受賞作「空中ブランコ」にも登場するらしいのですが、いやはや、ハチャメチャです。

表題作にもなっているプール依存症や強迫神経症、携帯依存症など、ひょんなことから誰でもが患いかねない心の病気になった人たちが訪れる伊良部総合病院の神経科。こう書くと、なんだか深刻な話のようにも思えるけれど、伊良部の治療(?)の仕方は、「いいんじゃないの。そんなに心配しなくても」というスタンスで、逆療法ともいえるべき荒療治。

どんなことも、そんなに深刻に悩まなくてもいいんじゃないのと思わせてくれる、なんとも愉快で痛快な作品です。伊良部という精神科医の風体がもう少し、かっこよくてもいいように思えるけれど、気ぐるみをきたみたいな様子が、どこか愛らしささえ感じさせて人気なのかもしれませんね。

この伊良部のシリーズとして、「空中ブランコ」のほかに「町長選挙」という作品も出ているらしく、文庫になり次第、順を追って読んでみたいなと思います。

kyoko0707k at 15:47|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2006年07月28日

柴田よしき「聖なる黒夜」

聖なる黒夜

山内 練よ。あなたの心の奥の深い悲しみと絶望を、そして泥にまみれながらも決してなくすことのない美しく澄んだ愛を、私はしっかり受け止めました―。

柴田よしきの代表作「RIKOシリーズ」と「花咲慎一郎シリーズ」に登場する男妾あがりのヤクザ、山内 練。そして同じく「RIKOシリーズ」に登場する麻生龍太郎。この二人の出会いとある事件の秘密が解き明かされるとともに、同時進行で一つの殺人事件の犯人探しが始まります。

上下二段に書かれた672ページの大作ですが、練や麻生龍太郎にまつわる真実が知りたくて、結末が知りたくて、分厚い本をバッグに入れ、電車の中でも打ち合わせまでの少しの空き時間にも、ひたすら読み続けました。

山内練と麻生龍太郎が最初に登場した作品は、柴田よしきの2作目「聖母の深き淵」ですが、この「聖なる黒夜」は、38作目の作品で、6年の時を経て出版されています。これは、2作目を書いたときから、すでに着想があったということなのでしょうか? この壮大な仕掛けに圧倒されるとともに、柴田よしきさんの力量に敬服します。

ところで、この作品は、今までのシリーズを知らない方にも、独立したミステリーとして十分読み応えのあるものになっていますし、練と龍太郎のラブストーリーとも言えると思います。

中山可穂の作品に描かれるビアンの恋愛もそうですが、この作品での男性同士の恋愛も、ヘテロの場合以上に切なくて官能的に思えるのはなぜでしょう。ビアンでもバイセクシュアルでもない私だけれど、何かこういう世界が崇高とさえ思えてしまうのは、作家の筆力のせいなのでしょうね。

kyoko0707k at 19:03|PermalinkComments(3)TrackBack(1)

2006年07月27日

「蟲師」の不思議な世界観にひたる

蟲師 (1) アフタヌーンKC (255)

この「蟲師」というコミックも、息子たちに「読んでみたほうがいいよ」とすすめられて手に取った作品です。「寄生獣」と同じく。月刊アフタヌーンに連載されていて、大反響を呼び、深夜にTVアニメ化もされていました。

私が“母もの”に弱いのを知ってか、「まず読むなら第5巻から」と手渡され、さっそく読んでみると第1話の「沖つ宮」というのが、生まれ変わりにまつわる話で、涙がぽろぽろという悲しさでなく、深く物事を、命のあり方を考えさせられました。

第5巻に収められた5つの挿話の不思議な世界観にひかれ、結局第1巻からすべて読みました。ちなみに、「蟲」とは、動物でも植物でもない、生命の原生体のこと。その蟲と人の世界をつなぐ「ギンコ」が主人公となっています。

昨日のニュースで、この「蟲師」が映画化されるということを知りました。ギンコ役はオダギリ・ジョーだそう。私と次男は「いいんじゃない」という意見。長男は「うーん、ちょっとどうかな」だそうです。

TVアニメ化された作品をビデオで観ましたが、こちらは、原作を見事に動画で再現していて感激しました。さて、実写版の映画(来年の春に公開)はどうでしょう? 蟲たちの妖しげな世界はCGで描くのでしょうが、いったいどんな作品に仕上がっているのか気になります。

kyoko0707k at 23:52|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年07月18日

昨夜のTBSドラマ「恋愛小説」

息子に「デュークがドラマになるらしいよ」と聞いて、楽しみにしていた昨夜のTBSドラマ(…スティーブン・キングマニアの息子が私の本棚から江國香織の作品を取り出して読んでいたことに驚いたけれど)。主人公が優香でデュークが中尾明慶だというので、果たしてイメージどおりかしらと二人で放送前からかなり盛り上がっていたら、“愛犬デューク”のイメージにぴったりの中尾明慶くん。泣き顔の優香もよかったですね。

しかも、このドラマ、3つの短編のオムニバスで、なんと前にこのブログでも紹介したことのある浅田次郎の「月のしずく」まで! こちらも最初にちょっとしか出てこなかった北村一輝といい、泉谷しげる、藤原紀香の組み合わせといい、原作のイメージのままで納得の仕上がりでした。

2作目の「十八の夏」は、私がまだ読んだことのない光原百合さんの作品。ひねり具合が連城三紀彦の作品を思わせ、少し影のある女性を観月ありさが好演していました。いつものキャピキャピの役よりも、こういう役のほうがずっといいのになと思ったのは、私だけでしょうか?

素敵なドラマをみて、もう一度原作を読みたくなった夜でした。

デューク

十八の夏

月のしずく


kyoko0707k at 12:43|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2006年07月06日

江國香織「号泣する準備はできていた」

江國香織の直木賞受賞作品「号泣する準備はできていた」がようやく文庫本になったので、読んでしまうのがもったいないような気持ちだったけれど、大切に大切に読みました。

作者が少しずつ年を重ねていくように、小説に登場する主人公たちも以前の作品よりも年齢が上になってきていて、この短編集に出てくる女性たちもみな30代後半です。そして、日々の淡々とした生活の中に何かを抱えていて、だけど自分の気持ちに正直に、まっすぐに生きている…

この作品の中にも、確かに私自身がいるし、自分と重ね合わせて読むと心がひりひりとして辛かったりもします。

でも読後にあるのは、「だけど、これでいいんだよね? だって私は私だもの。これが私らしく生きるということだもの」という確かな答え。読者それぞれの「私らしいまっすぐな生き方」を再確認させてくれるような気がしてなりません。

この作品集の奥にあるもののこと、男の人にはわからないかも…


号泣する準備はできていた


kyoko0707k at 16:23|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2006年07月02日

東野圭吾「時生(トキオ)」

時生

昨年、NHKの夜の連続テレビ小説で放映されていて、ところどころ見ていた「時生(トキオ)」。国分太一と嵐の桜井くんの共演がとても印象に残っていたものの、きちんと筋を追ってみていなかったので、ずっと気になっていたドラマの原作をようやく読むことができました。

週末に書店で購入して、今日一気読み。3時間半で読了しました。会話が多いせいもありますが、さすが東野圭吾の作品だけあって、先へ先へと読ませる力はすごいです。未来の息子と、若気の至り満開で、ちゃらんぽらんなことこの上ない父親とのやりとりが、テンポよく進んでいって見事。

話の核になっている追走劇そのものは、たいして魅力的だとも思えないのに、こんなにも引き込まれるのは、やはり、時生と拓実という未来の親子の会話や隠されたエピソードが胸を打つからでしょう。

最後は泣くまいと思っても、涙があふれました。でも、不思議に心がさわやかです。
東野ファンはもちろんのこと、息子のいる父親たちに、そしていつかは父親になるかもしれない若者たちに、そして、その母親たちにも…おすすめの1冊です。

kyoko0707k at 23:47|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年06月30日

井上夢人「おかしな二人 岡嶋二人盛衰記」に今の自分を重ねる

おかしな二人―岡嶋二人盛衰記

先月、「2005年版 この文庫がすごい!」ミステリー&エンターテインメント部門第1位という帯にひかれて読んだ、岡嶋二人の99%の誘拐。そんなにうまくいく?と思いながらも、ぐいぐい読ませておもしろく、誰も殺されたりしないところも後味がよくて、「やー、もっと早くに読んでおけばよかったぁ」と思ったくらい。

それが、岡嶋二人という作家の作品を読んだ初めてだったのですが、岡嶋二人は、すでにミステリー好きの方なら周知のように、徳山諄一と井上夢人による共作筆名です。この「おかしな二人」には、この二人の出会いから共作を辞めるまでの歴史のようなものが綴られていて、これまで発表された作品が二人によってどのように作られたかまで種明かしされているのだから、おもしろくないはずがありません!

ネタバレのところもあるので、もっと岡嶋二人の作品を読んでから、この本を読んでもよかったかもしれませんが、私はこの本を読んだことで、かえって「岡嶋作品」への興味がわいたような気がします。

実は、今、私自身も某専門誌への記事を書くにあたって、彼らのようにastyさんと二人でチームを組んで取材・構成・執筆などを行っています。続きを読む

kyoko0707k at 14:23|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年06月26日

佐々木かをり「自分が輝く7つの発想」

自分が輝く7つの発想―ギブ&テイクからギブ&ギブンへ

私が使っている手帳「アクションプランナー」の考案者、佐々木かをりさんの著書
「自分が輝く7つの発想」を読みました。副題の「ギブ&テイクからギブ&ギブンへ」に惹かれたのと、昨年12月に「イー・ウーマン」のパーティーでお目にかかったときの印象がとても輝いて素敵だったから。

ギブ&テイク。これは「与えたら奪う」つまり、人から奪うための条件として自分も何かを与える…という駆け引きイメージを持つ言葉だというんですね。それに対してギブ&ギブンは、与え、与えられるという発想。自分からまずは与える、そうするときっと自分にも与えられるのだと。

これは、その後の章で語っている「Win−Win」の発想にもつながります。相手と一緒にプラスになるという考え方。いいなあと思います。

また、「愛を込めて仕事をする」という言葉も心に残りました。仕事で重要なことは継続性。信頼を築きながら仕事を継続させ、発展させていけるかどうかはかかわっている人次第。チーム(会社)の中での人と人とのつながりを大切にし、取引先に対しても愛情を持って仕事をして、相手の目的達成につながるような仕事をしていく。フリーランスであれ、会社組織であれ、それは同じことでしょう。

今、新たなスタート地点に立って、仕事を始めようとしている私にとって、バイブルにしておきたいような1冊でした。

kyoko0707k at 14:54|PermalinkComments(5)TrackBack(0)

2006年06月17日

石持浅海「月の扉」

月の扉

「このミス」8位、「本格ミステリ」3位、かつて、こんなに美しいミステリーがあっただろうか。

こんな帯をつけられて、書店に並んでいれば買わないわけにはいかないでしょう?
石持浅海「月の扉」、さっきお風呂で1時間、その後一気に最後まで読みました。

不登校の子どもたちを数日間で立ち直らせてしまう沖縄でのキャンプと、師匠と呼ばれる不思議な力の持ち主の存在。そして、おきたハイジャック、飛行機内での殺人。

師匠のその不思議な力をもう少し説得力を持って描いてくれれば、もう少しストーリーに厚みが出たようにも思うのですが、私としては今一歩というところでした。

でも、最後にどう決着をつけるのかということや、幻想的な「月」の話とのからみが気になって一気に最後まで読ませたところはやっぱりすごいのかもしれません。

これ以上書いてしまうと、これから読む方への興をそぐと思うのであまり書けませんが、たまたま「座間味」と書かれたTシャツを着ていたために、ハイジャック犯に「座間味くん」と呼ばれて、この事件にかかわっていくサラリーマンの存在が、なかなかいいなと思いました。

2006年の「このミス」2位に選ばれたという「扉は閉ざされたまま」あたりを、次に読んでみたいと思います。

kyoko0707k at 18:30|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2006年06月16日

命と生き方について考える3冊

病院で死なないという選択―在宅・ホスピスを選んだ家族たち
12年前に、母を大腸がん発見からわずか5ヶ月で亡くしたときの経験から、「病院で自由も生きる喜びもなく死んでいく」ということに疑問を持ち、よく死ぬというのはどういうことなのだろうとずっと考えてきました。

そんな私なので「病院で死なないという選択〜在宅・ホスピスを選んだ家族たち」という新書に出会ったとき、迷わず手に取りました。読んだのは3月頃だったでしょうか。少し疲れていたせいもあって、ちょっと元気がないときで、私がこの本を読んでいたら長男に「あのさ、まだ、そういう本読むのは早いんじゃないの?」と言われてしまいましたっけ(心配かけてごめんね)。別に今、自分が病気だとか、その心配があるから読んでいたわけではないのだけれど。

でも、家族みんなが病気ときちんと向き合って、最期まで人間らしく生きられるように支えていく様子を読んでいると、たくさんの元気をもらえるような気がするから不思議です。家族ってありがたいと。そんな家族でありたいと。

そして、もしも自分ががんの告知を受けて、もしもすでに手の施しようがないのなら、やっぱり病院の天井をながめて、その日を待つのはいやだなと思いました。在宅にはこだわらないけれど、効くかどうか分からない抗がん剤を使って、副作用に苦しんで死に向かうくらいなら、ぎりぎりまで人間らしくありたい。ホスピスで穏やかにその日を迎えたいと思います。

鎌田實さんの「がんばらない」「あきらめない」の2冊は、あまりにも有名なので知っている方も多いと思いますが、私はついこの間読んだばかりです。「病院で死なないという選択」は、中山あゆみさんというジャーナリストが書いたものですが、こちらは在宅ケアやホスピスの充実に尽くしてきた諏訪中央病院の院長の著作。

ご自身の父親とのエピソードなども書かれていて、また違った視点で医療や命、家族のことを考えることのできる本です。がんばらないこと、あきらめないこと、だけど、一生懸命生きることの大切さ。

この本を読んだ日本中の人たちが、病気になったときには長野に行きたくなってしまうのではないかしら、他の病院もこういうふうに心の医療をしてくれないものかしらと、そんな心配も。

在宅ケアを推し進めてきた鎌田實さんが言っていました。「在宅ケアにこだわる必要もないんですよ。家で看取ってほしい人はそうすればいいし、病院のほうが安心なら、そのようにすればいいんです。大切なのは、本人が望んでいるようにしてあげること、その心の声を聞いてあげること」だと。

そしてね、たとえがん宣告を受けたとしても、人間にはナチュラルキラー細胞という、がんと闘ってがん細胞を食べてくれる細胞があるんですって。だから、がんに負けないという自分自身の強い意志というのはとても大切なんですって。

そう考えると、本人にきちんと告知することって大切なのかなと。母には言えなかったけれど。たぶん知っていたはずだけれど…

と、いろいろと考えさせられ、でも涙しながらも生きる元気の出る本3冊のご紹介でした。

がんばらない


あきらめない


kyoko0707k at 02:45|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2006年06月13日

「ストレスフリーの仕事術」&「Life Hacks PRESS〜デジタル世代のカイゼン術」

ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則

新たなスタートを切ろう!と決めたとたんに、猛烈に本が読みたくなって、打ち合わせの帰りにお茶の水の丸善に寄ったり、Amazonで検索したり…

で、ものすごい量の本を買い込み、注文し、1日2冊ペースで本を読んでいます。大好きなミステリーはほんの少し。今はどうしても仕事関連のものになってしまいます。

まずはデビッド・アレン著/田口 元監訳「ストレスフリーの仕事術」。これは、いつもコメントを寄せてくださるゲンガーさんのブログに紹介されていたのを読んで、興味を持った本。ここでいうストレスフリーというのは、会社の中で人間関係をうまく築いていきましょうとか、上司とうまくやりましょうとかいう類のものではなくて、最近注目されているGTD(Getting Things Done)の手法や考え方がわかりやすく紹介されています。

じゃあ、具体的にGTDって何のこと? どうすればいいの?というと、頭の中にあるやりかけの仕事をすべて書き出して、次にとるべき行動を決め、それを管理し、定期的に見直す…ということなのですが、これがきっちり身につくには、ちょっと時間がかかるかもしれまん。とりあえずは、本の最後に載っていた「GTDのワークフロー」を120%に拡大コピーして、机の前に貼ってみました。

さらに、これを具体的に、どのように日々の生活(仕事)に取り入れたらいいのかを知りたくて、これまた、ゲンガーさんのブログにも紹介されていた「Life Hacks PRESS〜デジタル世代のカイゼン術」を購入。GTDを実践するためのツールが紹介されているだけでなく、これまた、今注目のマインドマップのことにも触れられていて、買ってよかったと思いました。

私は、例のRollbahnのノートに、赤や青や緑やさまざまな色のSARASAのペンで取材したことや、アイデアなどを書いているけれど(けっこう、図というかイラストも使ってます)、これって、マインドマップの考え方にも近かったようで、へぇーと参考になりました。

あとは、こうした手法を上手にとりいれて、頭(脳)を整理して、ストレスフリーの状態を作って、アイデアを生み出し、さらにそれを形にできればいいんですけどね。「何か」をするための手法にばかり頼って、肝心のアイデアや、最終的な結果に結びつかないようでは何にもならないので、「私はこれをやっている」という自己満足に陥らないようにしながら、活用できたらなと思います。

Life Hacks PRESS ~デジタル世代の「カイゼン」術~


kyoko0707k at 11:58|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2006年05月13日

荻原 浩「噂」

文庫の帯の言葉、「衝撃のラスト1行に瞠目!」。
そして、昨年来、目が離せないでいる荻原浩のミステリー作品。
これが読まないでいられようか?

ということで、荻原浩の「噂」、読みました。題材がWOM、つまりWORD OF MOUTH(口コミ)。これを意図的にしかけるマーケティングの戦略と、それをなぞったような殺人事件。果たして犯人は? その意図は? 読み出すと止まらず、結局3時間一気読みでした。

小暮刑事と名島警部補…このコンビの心温まるやりとりが、いかにも荻原浩作品らしく、「ふーん、そういうことだったか」と納得した後の、平手打ち、いや強烈右手フックのようなラスト1行!

で、慌てて最初から読み直してしまい、詳しい説明がほしくなってしまい、オロオロとしている私です(ただいま、無理やり夫に読ませています)。

誰か、この作品を読んだ方がいらっしゃったら、ご連絡くださいっ!





kyoko0707k at 20:06|PermalinkComments(3)TrackBack(1)

2006年05月02日

高橋ツトム「鉄腕ガール」

先月、いつになく元気がなかった私に長男がすすめてくれたのが、このコミックス。私はほとんど漫画を読む習慣がないので半信半疑で読み始めたのですが、はっきり言ってはまりました。

戦後の敗戦国と呼ばれていた日本で、GIを相手に女給をしていた女性たちが女子プロ野球のチームを結成して活躍していくストーリー。何と言ってもピッチャーをつとめる主人公の加納トメ(この名前が時代を物語っているでしょう?)が、魅力的です。決して何事にも屈しない負けん気の強さ、誇り高さ、そして美しさ。

前にも書いたかもしれませんが、私は中学時代にソフトボール部に所属し、ピッチャーをしていました。だからマウンドに立って、バッターを前に闘志をみなぎらせる気持ち、身にしみてわかります。それに私、たぶん見た目よりずっと負けん気が強いです。

そんな本来の私がふつふつと顔を出し、主人公と同じりりしさでこのコミックスを一気に読んでしまったのでした。でも、家にあるのは4巻まで。この連休中に続きを探して読破しようと思っています。

「絶対ぴったりだから。元気がでるに、決まってるから」と貸してくれた長男よ、サンキュー! さすが君は私のことをわかってるね☆




鉄腕ガール (1)


kyoko0707k at 22:06|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2006年05月01日

「一日に24時間もあるじゃないか」中谷彰宏

一日に24時間もあるじゃないか PHP文庫

ご無沙汰しておりました。「もしや入院でも!?」と心配して直メールをくださった方も十指を超え…大変失礼いたしました。少しずつ、体力気力ともに復活の兆し。どうかこんなsallyですが、見放さずに今後とも応援してくださいませ。

さて、復活第一弾の話題がこの本では、苦笑いをされてしまいそうですが、ずいぶん昔に買って、すでに何回も読み直した「一日に24時間もあるじゃないか」。ついさっき、お風呂の中で読む本はないかと、本棚を眺めていて、目に飛び込んできた本なんですけどね。フリーランスのライターの仕事で締め切りに追われていた頃以上に、組織の中で、仕事をしている今、響いてくる言葉の多いことにびっくりしています。

「自分より、相手のほうが忙しいと考えよう」
…自分より世の中に忙しい人間がいるということを知っている人は、「忙しい、忙しい」なんて絶対に言いません。〜中略〜自分と相手とを比べたら、相手のほうが忙しいだろうと思えるようになったら、これは一人前です。

「忙しいけど頑張る人を神様は応援する」
…「忙しいからできない」と言ったまま何もやらないで忙しさのせいにするか、もしくは「忙しいけれども、えーいやってしまった。ますます自分が忙しくなってきた」と思いながらも楽しく生きるか。〜中略〜「忙しいけれど、頑張ってこの仕事にチャレンジしてみよう」と思う人に、神様は手助けをしてくれるのです。

「何時間働いた」と「何時間寝た」という発想から抜け出そう
…要は起きている時間にどれだけの仕事がこなせるかということのほうがより大事なのです。〜中略〜これからは何が新しいアイデア、サービスを生み出すかというソフトが重視される時代です。同じ結果なら10時間でやった人より1時間でやった人のほうがより評価されるべきなのです。

ちなみに、この本の作者、中谷彰宏さんには、昨年の暮れの「イーウーマン」のパーティー(佐々木かをりさん主催)で、お目にかかりました。たくさんの美女に囲まれて、ものすごいオーラを放っていたことを覚えています。

ライターの仕事は1本1本の原稿が勝負ですが、組織の中での仕事はなかなか先が見えません。けれど、せっかく乗りかかった船なのだから、あと少し、「一日に24時間もあるじゃないか」と思いながら、がんばっていこうと思います。


kyoko0707k at 01:07|PermalinkComments(8)TrackBack(0)

2006年03月09日

俵万智「かすみ草のおねえさん」

かすみ草のおねえさん

今、俵万智さんのエッセイにはまっています。彼女と私は同い年。この「かすみ草のおねえさん」は、俵さんが27歳から31歳のころに書いたエッセイ集ですが、少しも昔の話に感じられず、共感することが多い本でした。

私は、俵さんや林あまりさんなどの歌集を読むのがとても好きだけれど、自分では作れません。でも、俵さんの言葉に対する考え方や、日本語への思い、どこか生真面目なところ、それでいて思いがけないような大胆さのあるところ(ほら、俵さんはシングル・マザーになりましたよね)など、たぶん、私と似ているところがあるのではないかと思うのです。私は、シングル・マザーではないけれど、生真面目さと裏腹の「!」の部分がありますから。

「かすみ草のおねえさん」の最後に紹介されていた、俵さんの短歌がとても心に残っているので、紹介しますね。

「もし」という言葉のうつろ人生はあなたに一度わたしに一度

そのとおり! 私は○歳のころに戻りたい、やり直したいと思ったことがないんですね。もしもあの時にこうしていたら、あの道を選んでいたら…と考えるなんてもったいないし、シワやシミができて、若い頃みたいにピンと張った肌ではないけれど、失敗も含めて一つ一つ積んでここまで来た、今の自分が一番好きです。人との出会いも、本との出合いも、すべて必然。そう思っています。

今、私の手元にある、俵さんの本。「あなたと読む恋の歌 百首」「言葉の虫めがね」「花束のように抱かれてみたく」「三十一文字のパレット」「りんごの涙」。
アマゾンで、いっぺんに注文してしまいました。小説を読む合間に、少しずつ少しずつ、味わいながら読みたいなと思います。





kyoko0707k at 18:15|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2006年02月27日

浅田次郎「月のしずく」

またまた、浅田次郎の短編集に泣かされました。電車の中で読んでいて、「ここでは泣けない」と思いつつ、こらえ切れずに涙が一筋。さまざまな“二人”がいて、さまざまなドラマがあって、どれもホロリとさせられる7つの作品が集まった「月のしずく」。

舞台が表参道だったからか、主人公の年齢が私と同じだったからか、特に「聖夜の肖像」は胸にひりひりと痛く、心にしみる作品でした。詳しく書くと物語を読む楽しさがそがれると思うので避けますが、主人公・久子の心の揺れが手に取るようにわかり、それに対する夫の様子に深く心を打たれました。物語のしめくくりもさわやかです。

一編ずつ、大切に味わいながら読みたい短編集です。


月のしずく


kyoko0707k at 19:14|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2006年02月05日

柴田よしき「ラスト・レース 1986冬物語」

寝る暇もない…と言いつつ、年明けからは読書、ちゃんと復活しています。通勤時、トイレ(!)、お風呂の中。で、久々の柴田よしき作品、「ラスト・レース 1986冬物語」読了です。

1986年とは、今から20年も前のこと。あのバブルの始まりのころのことです。前にも書いたように、私はすでに結婚していて、しかも就職して間もない夫のわずかなお給料でやりくりしていたころなので、バブル景気の恩恵を受けたおぼえはこれっぽっちもありません。強いていうなら、今よりもずっと高かった物価に苦しめられていた記憶ばかり。

でも、もしも私が結婚という道を選ばずに、そのまま旅行会社のOLとして働いていたとしたら、主人公と同じような気持ちだっただろうなと思いながら読みました。奇しくも私が今通っている外苑前付近の街の様子が描かれていたりして、そのあたりも興味深かったです。

ある晩、二人組みの若い男に押し入られ、レイプの被害にあうという穏やかでない幕開けですが、その後このうちの一人と暮らしていくことになるなど、柴田作品ならではのジェンダーの考え方や男の身勝手さなどが、ミステリーとしての筋書きとは違った流れの中で書き込まれています。自閉症に対する世間の認識の誤りなど、この作品が訴えようとしていることが多岐にわたる分、トリックのようなものには、若干の甘さが感じられますが、読み応えはありました。

ここのところご無沙汰だった柴田よしきさんの作品でしたが、やっぱり好きだなあと再認識しました。彼女の最近のブログを読むと、相変わらず締め切りに追われていて、かなり大変そうな様子。睡眠障害なども抱えているようですが、それでも中学生の息子さんのために毎日丁寧にお弁当を作り、手作りのパンを焼く毎日に、私もがんばらなければと思いを新たにします(仕事が煮詰まっているときには、必ずだんなさんが夕飯を作っているところもすごいなあと思います)

参考までに…
【柴田よしきの日記】http://blog.livedoor.jp/c_nagatsu/

ラスト・レース―1986冬物語


kyoko0707k at 01:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年01月24日

荻原浩「コールドゲーム」

先日、「あの日にドライブ」が直木賞にノミネートされた荻原浩さんの「コールドゲーム」を読みました。「神様から一言」や「オロロ畑でつかまえて」などユーモアたっぷりの作品を書くかと思えば、これは高校3年生たちが主人公の青春ミステリーだというので、興味津々で読み始めたのですが…

中2の時のいじめがすべての伏線になっていて、荻原さんならではの軽快な語り口にひかれてどんどん読み進めていけるけれど、実はとても考えさせられるテーマを扱っています。それに青春ミステリーというと、まるで赤川次郎さんの作品みたいだけれど、「本当にそいつが犯人?」「次に狙われるのは誰?」「その手口は?」など、ひたひたと迫りつつある魔の手を気にしながら読む感じは、ホラーという印象さえ。

後味がいい作品とは言い難いけれど、ラストシーンはけっこう気に入っています。そして、主人公の光也がいつのまにか精神的に成長していて、希望を感じさせるところにも救いがあっていいなあと。石田衣良さんの「4TEEN」のようなさわやかさがあったらいいと思うけれど、17歳ゆえに、なかなかそうはいかないのかも。

それにしても、荻原さんて、いろいろな作品を書きますね。「明日の記憶」も早く読みたいなあと思います。

コールドゲーム


kyoko0707k at 02:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年01月22日

小川洋子「博士の愛した数式」

「本屋さん大賞」に選ばれたときから読んでみたいと思いつつ、文庫になるのを待っていたのが、小川洋子さんの「博士の愛した数式」。昨年12月に文庫化されたのと同時に購入。やっと読む順番がまわってきました(笑)

折りしも、今日からこの作品を原作にした同名の映画が封切られましたね。年明けから駅構内のポスターやテレビCMなどで、寺尾聡さんや深津絵里さんのことを見ていたので、本を読むときにも私の頭の中で、家政婦さん役はすっかり深津絵里さんのイメージで読み進んでしまいました。博士役の寺尾さんは、見ていないのでなんとも言えませんが、深津さんは役柄のイメージにぴったりだと思います(読む前に役者のイメージを植え付けられるのは本当は好きではないのだけれど、この場合はぴったり!)

で、作品がどうだったかって? 評判どおり。◎です。
素数、完全数、フェルマーの公式……日頃、あまりなじみのない、学生時代以来の数学にまつわる単語も違和感なく自分の中にすっと入ってきて、博士や家政婦さんやその息子のルートくんたちのように、数字や公式が愛おしく思えてくるのだから不思議です。

この作品でいちばん好きなのは、3人で阪神戦を見に行く場面です。そして江夏の背番号が28という完全数という、その事実。小川さんの着想に拍手。そして、その着想をこんなにも文学的で美しい文章にまとめた才能に拍手を贈りたいです。

6度目のノミネートでついに直木賞を受賞した東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」といい、数学者が主人公の作品が次々に評価されていることも興味深いですよね。

来週あたり、映画版も見てみたいなと思います。

博士の愛した数式


kyoko0707k at 18:12|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年01月21日

黒砂糖入り生姜紅茶でプチ断食!?

しょうが紅茶たまたま書店で手に取った「体温を上げて病気を治す」という本をペラペラとめくってみると、体の冷えがいかに病気のもとになるか、体温をあげることがいかに大事かが書かれていて思わずひきこまれ、レジへと。

この本で紹介されていたのが、黒砂糖入り生姜紅茶を朝食代わりに2〜3杯飲む、『プチ断食』というもの。食べ過ぎは体を冷やす元になるし、朝は“排泄”の時間なので無理にたくさんのものを食べないほうがいいというんですね。

年末から体重が1.5キロほど増えてしまい、体が重くていやだなあと思っていたところなので、さっそく実行してみたのですが、はっきり言ってその効果に驚いています。たった3日の実行で体重が元に戻ったこともうれしい限りですが、代謝がよくなって体温が上がっていることが実感できていることがうれしいです。

これまでも食欲がなかったりして朝食をとらないことがありましたが、食べないのと、生姜紅茶を飲むだけにするのとでは、まったく意味(質)が違うんですよね。朝食分のカロリーを取らないことでやせようとするわけではなく、紅茶のカフェインや生姜の成分で利尿作用などを高め、生姜の成分が体を温めて血行をよくし、さらに黒砂糖でミネラルや糖分を補うことで脳の働きも活発にして、気力も高める…というわけ。体を温めるということは、それだけエネルギーを使うわけだし、代謝が活発になれば体内に水分や老廃物を溜め込まないようになるっていうことですね。

普通にいれた紅茶にすりおろした生姜を小さじ1杯程度、それに黒砂糖を適宜プラスするだけ。写真でみるとかなり色が黒っぽいですが、これは黒砂糖のせいです。黒砂糖のかわりに蜂蜜でもOKだそうですが、私は黒砂糖のちょっとクセのある味のほうが、生姜と合うような気がします。

石原結實式体温を上げて病気を治す―完全図説版


kyoko0707k at 18:10|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

浅田次郎「姫椿」

昨年秋から読書量が減っていた私ですが、2006年に入ってから再び“読書の楽しみ”をしみじみと味わっています。いい本にめぐり合えているので、満足感もひとしお。浅田次郎さんの「姫椿」も、私を幸せな気分にさせてくれる作品でした。

ファンタジー(作品によってはホラーに近いものも)の世界に通じる8つの短編集です。特に心に残ったのは「獬(シエ)」。『世にも奇妙な物語』の心温まるバージョンのような作品…と言ったらわかる人にはわかってもらえるでしょうか?

そのほか、表題作の「姫椿」や、「永遠の緑」にもホロッとさせられました。8つの短編すべてが心温まる終わり方ではなく、「ちょっと考えてごらんなさい」と課題を与えられたような気持ちにさせられる作品もあります。でも、1冊を読み終えたときには、読んでよかったと思える。これは、8つの作品の並べ方もいいからなんでしょうね。出版者の担当編集者のセンスなのかな。

長編を読むのはヘビーという方に。ちょっと異世界に興味のある方にも。そして、本を読むのが大好きな方にももちろんおすすめしたい1冊です。

姫椿


kyoko0707k at 17:18|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年01月14日

右近勝吉「平凡な私が月300万円稼ぐ7つの理由」

私のお気に入りのサイト、くちコミ読書カフェ「Hon−Cafe」で、ナビゲーターの和田清華さんが紹介していたのを読んで、速攻でAmazonに注文して読んだのが、右近勝吉さんの「平凡な私が月300万円稼ぐ7つの理由」。

「え? そんなに稼ぎたいの?」って?
いいえ、この本はビジネスの成功の秘訣について書いた本ではなくて、『凡人』=人間がいかにして生きたらいいのかについて書いた本です。

右近さんは、日本で初めて「便利屋」を始めて成功した人。何か才能のある人はその道を究めればいいのだろうけれど、何の取り柄もない普通の人間が運をつかむには…
等身大の自分をそのまま受け入れて、目の前にある事柄を一つ一つやっていくしかありません。その中でめぐってきた運を無理のない体勢でスッとつかむ感覚がいいのだと思っています」と。

何もしないでいて「おいしい思い」をすることを運がいいことだと思っている人は、決して運などつかめないのだと。

同じ内容の繰り返しが多いので、少々しつこい感じもしますが、それだけ右近さんの思いが強いのでしょう。終章に、「一緒にお風呂に入ってほしい」という依頼をしてくる一人暮らしの老人が多いが、依頼を引き受けた1週間後に、申し合わせたように亡くなっている…という話が出てきてハッとさせられます。どの老人も自分の死期を無意識のうちに悟って、最後に人と人とのふれあいを感じたくて、こんな依頼をしてくるのではないかと、右近さんは分析しています。

今後、福祉面にもかかわりたいし、引きこもりの子どもたちを預かる施設を作りたいという右近さん。人生の教訓が嫌味なく散りばめられたこの本、多くの人に読んでほしいと思いました。

平凡な私が月300万円稼ぐ7つの理由


kyoko0707k at 21:10|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2006年01月09日

白川道「十二月のひまわり」

十二月のひまわり
白川道さんの作品は初めてです。「十二月のひまわり」は、車券師や暗殺者など、一般的な職業ではない裏の仕事ともいうべきヒミツを持った男たちが主人公の短編集です。

1話が文庫本で60頁弱という短編。その中に凝縮された人生にただただ圧倒され、終盤のどんでん返しのような“本人も知らなかった真実”に驚かされ、生きることの悲哀を感じさせられた作品でした。

ミステリーではないのに、上質のミステリーを読んだような気持ちにさせられました。今度は長編を読んでみたいと思います。

kyoko0707k at 22:39|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

東野圭吾「容疑者Xの献身」

容疑者Xの献身

昨年の秋に買ってあったのに、読む暇がなくてずっと私の枕元に置いてあった東野圭吾の「容疑者Xの献身」。宝島社の「このミステリーがすごい〜2006年版」(2005年に発行された本)で、見事1位に選ばれましたね。

ますます楽しみになって、お正月3が日の読書三昧の2作目は、この作品に決定。大切に大切に読みました。

淡々と書いてあるし、作品の冒頭ですでに犯人も明かされている…それなのに、どうしてこんなに評価が高いのか、正直言って、前半ではあまりわかりませんでした。でも後半、それもラストに向かってどんどん感動が深まります。号泣はしなかったけれど、主人公Xの献身に、その深い愛に、静かな涙が頬を伝いました。

ああ、読んでよかったと思える作品です。おすすめです。

----------
2006.1.10.追記
昨日、直木賞候補作品が新聞で発表されていましたが、この作品もやっぱりノミネートされていましたね。「秘密」のときも祈るような気持ちでいましたが、残念な結果になりました。今回も恩田陸さんや、昨年から私もはまっている荻原浩さんの名前があがっていて、混戦模様になるのでは…

17日の発表が気になります。

kyoko0707k at 14:07|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年01月05日

石田衣良「4TEEN(フォーティーン)」

今年の1冊目が石田衣良の「4TEEN(フォーティーン)」。4人の14歳の男子中学生が主人公の、日本版「スタンド・バイ・ミー」といった感じの物語です。石田氏の直木賞受賞作品ですね。

ページをペラペラとめくって立ち読みしたときには、「ちょっと軽そうな本みたい。買って読むほどじゃないかも…」というのが正直な印象だったのですが、どうしてか再び棚に戻す気持ちになれずに暮れに買ってきた作品です。

ところが読み始めたら止まらない! のっけから泣かされ、揺さぶられ、それでいて読み飛ばすのはもったいなくて、1章1章大切に読みました。

扱っているテーマやエピソードは、結構重いものも多いのに、とにかく読後がさわやかです。新年の第1作にこの作品に出会えてよかったと思います。

読み終わったその足で、次男の部屋の戸をたたき、「とにかく読んでごらんよ。よかったから!」と本を押し付けてしまった私。長男と違って、ひたすら歌うかゲームに熱中するばかりで本をあまり読まない次男ですが、結局その晩徹夜して一気に読んでしまったとのこと(内容は、14歳の男の子のことを赤裸々に綴っているので、母と息子が語り合うには、ちょっと気恥ずかしいところもあるんですけどね…)。

石田衣良氏にしても、重松清氏にしても、私と同世代なのに、中学生の瑞々しい感性を作品に再現できるのはすごいなと思います。とにかく、中学生から大人まで、みんなにおすすめしたい作品だと思います!

4TEEN


kyoko0707k at 19:02|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年12月31日

蓮見圭一「水曜の朝、午前三時」

どうも代謝が落ちているようで、それも体調の悪さに関係しているのではと、半身浴をしたところ、大量の汗が吹き出して何だかすっきり。そうか…ここのところ、お風呂に入っても汗が出るほど温まっていなかったのだなあと納得。日々のことに追われていると、そんな当たり前のことにさえ、気づかなくなっているんですね。こんなことではいけないと、2005年が終わろうとしている今頃になって、反省している私です。

あらあら、前置きが長くなりました。それでね、半身浴のいいところは、汗(&老廃物)が出てすっきりすることだけではなくて、本が読めること。読みかけだった、蓮見圭一氏の「水曜の朝、午前三時」を読み終わりました。ああ! 本をまともに読んだの、本当に久しぶりです。

この作者の本は初めてですが、この作品は単行本で刊行されたときに、ベストセラーになったそう。45歳で亡くなった翻訳家で詩人の女性が、亡くなる直前に病院でテープに吹き込んだ若き日の恋物語が主軸となって話が進んでいきます。

舞台は1970年の大阪万国博覧会。当時、彼女は23歳。燃えるような恋をしながらも、ある事実を知ったときに彼との別れを決意して別の人との結婚を選びます。

主人公の直美はとても魅力的です。情熱的なところは、辻仁成の「サヨナライツカ」の沓子を思わせます。その恋が成就しないところもどこか似ています。

だけど…私は沓子のほうが好きだし、この作品にはそんなに感動できなかったなあというのが本当のところです。人生そのものに対する示唆に満ちた直美のメッセージは心にしみるのだけれど、ラブストーリーとしては、中途半端な印象を受けます。恋をあきらめた「ある事実」についても、書き込みは足りなかったのではないかと。

「号泣した」「これまでに出会ったことのないラブストーリー」「切なさが胸にしみる」などと絶賛された作品らしいのですが、どうして私の心にしみてこなかったのか、少々不安になってしまうほど。でもね、「サヨナライツカ」では、まさに号泣。しゃくりあげて泣いてしまって収拾がつかないくらいだったんですもの。

結局、心の琴線にふれるかどうかは、人それぞれなのでしょうね。

水曜の朝、午前三時


kyoko0707k at 01:43|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2005年12月05日

江國香織「いつか記憶からこぼれおちるとしても」

いつか記憶からこぼれおちるとしても
スティーブン・キングから解放された私が最初に読んだのが
江國香織さんの「いつか記憶からこぼれおちるとしても」。

江國さんはとても「ひらなが」にこだわっているみたいで、あえて漢字を使わない表現が多いので、とてもホッとします。

さて、この作品は私立女子高のある一つのクラスを舞台にした、連作短編集ですが、ものすごく共感できたというか作品の持つ空気感のようなものが本当によく理解できるものでした。

というのも、私自身が中・高ともに私立の女子校育ちでその独特の雰囲気が痛いほどよくわかるからなのでしょう。携帯とかプリクラとか、当時はなかったモチーフが出てきたとしても全然違和感がなくて、私の時代にもしそれがあったら、そんなふうだろうなとすんなり理解できるんです。

たぶん、作者の江國さんと私が2歳違いという、ほぼ同世代というのもあるのかなあと思いました。

でね、一つびっくりしたのが、この作品集の2つめにある「緑の猫」という作品のこと。2ページくらい読んでみて「あれ?どこかで読んだことある…」と思ったら、新潮文庫から出ている「いじめの時間」という7人の作家による短編集の中に収められているものだったんです。

それで、あらためて「いじめの時間」をひも解いてみたら、どうやら先に「緑の猫」ありき…であとから「いつか記憶からこぼれおちるとしても」が発表された模様。

でも…この「緑の猫」に登場する人物は、ほかの作品にも微妙につながっていて、決して独立した話じゃないんですもの。そこが不思議。少なくとも、私は「いじめの時間」で読んだときより、今回の「いつか記憶からこぼれおちるとしても」の一連の流れの中で読んだほうがずっとずっと心に残ったんです。

うーん、何のことやらというあなた、ぜひこの2冊を続けてお読みくださいませ。
(前に辻仁成さんの作品でも、同じようなことを言ったような…)


いじめの時間


kyoko0707k at 05:37|PermalinkComments(1)TrackBack(0)