2008年04月30日

我孫子武丸「殺戮にいたる病」

殺戮にいたる病殺戮にいたる病 (講談社文庫)

16年も前に書かれ、叙述ミステリーの最高峰として名高い、我孫子武丸の「殺戮にいたる病」…前々から読んでみようと思いつつ、敬遠していたのですが、ついに読了。読み始めたらノンストップでした。しかも見事に騙されたというか、読み終わって、最初からページを追ったのは、あの「葉桜の季節に君を想うということ」以来でしょうか。

猟奇的殺人が題材で、しかもかなりリアルな表現の連続なので、女性に限らず、この本を受け付けない人もいるかもしれませんし、決して読み終わって元気の出る小説ではありませんが、ミステリー好きの人なら、「そうきたか!」と愕然とすること請け合いです。

笠井潔氏による解説を読んでみて、さらに納得感が増すという点でも、これまでに読んだ小説の中で3本指に入るかも。1980年代〜幼女連続殺人の宮崎事件や、金属バット事件など〜の時代背景の中で、どこかゆがんだ家族の問題をあぶりだしていて考えさせられます。

でも、16年前では、「猟奇的殺人」だったかもしれないけれど、もしも今、本当にこんな事件が起きたとしても、「そういうこともあるかもしれない」と受け入れてしまうほどに、今の社会はますます病んでいるようにも思います。

ちなみにこの我孫子武丸という人は、一時期、息子や夫が夢中になってやっていた「かまいたちの夜」というゲームの原作者なのですね。私はテトリスくらいしかゲームができないけれど、「かまいたちの夜」だけは、やっているところを端で見ていて怖くて怖くて仕方なかったことを思い出します。

…この「殺戮にいたる病」の文庫の裏表紙に「衝撃のホラー」と書いてあるだけあって、我孫子氏はこうした世界を描くのが巧いのですね。この本はホラーであり、本格的な推理小説でもあると思います。

kyoko0707k at 14:36│Comments(0)TrackBack(0) 本のこと 

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