2006年08月02日

齋藤孝「発想力」

発想力

「声に出て読みたい日本語」「三色ボールペンで読む日本語」でおなじみの齋藤孝さんの、とても楽しいエッセイです。エッセイなんていうと怒られてしまうかもしれないけれど、タイトルの「発想力」というお堅い言葉とは裏腹に、どんどん気軽に読めて、なんとなく元気が出てきて、ニコリ、クスリと笑える本なんです。

まあ、「三色ボールペンで本に線を引きながら読んでいきましょう」という提案をすること自体が、とてもユニークな発想だし、かつ理にかなっているから、多くの人に支持されているのだと思いますが、この本に載っている数々のアイデアを読むと、齋藤さんという方は、常に脳がものすごい速さで回転していて、いつも何かを考えているのだなあと、本当に感心させられます。

たとえば、「就職難におみそシステムの導入を」という章。おみそシステムって何?という方、これは子どもの頃、大きい人たちと一緒におちびちゃんが鬼ごっこやカンけりをして遊ぶときに、絶対鬼にならない「おみそ」っていうのがあったでしょう? あれです。

つまりね、昔は企業は新入社員に“即戦力”をそれほど求めず、好きなことをのびのびとやっていた活力のある学生を求めていた。だから、入社してしばらくは、給料をもらいながら仕事を覚える…これって「おみそシステム」じゃないかと。

即戦力ばかり求めずに、この昔ながらの方法を取り入れるという発想で、学生を採用することで、荒削りだが器の大きい人物を入社させ、育て上げることができるのではないか…というのが齋藤氏の提案なんです。

こんなふうに、よく読むと時代を分析した、深い内容のことが書いてあるのに、とにかく文章がおもしろいのですいすい読めます。私は某短大の英文科卒だけれど、本当は大学の国文科に行きたかったな…なんて今さらのように思うことがあるのですが、できれば、こんな齋藤先生のいるゼミで勉強したいです。

そうそう、私は今の人生を何も後悔していないし、とてもおもしろい展開だと思っているけれど、もしも生まれ変わって好きなものを選べるとしたら、中学か高校の国語の先生になりたいなと思います(これはね、北村薫の“時の三部作”の1作目、「スキップ」を読んで以来の、私の願いなんです)。

kyoko0707k at 13:17│Comments(0)TrackBack(0) 本のこと 

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