2006年07月28日

柴田よしき「聖なる黒夜」

聖なる黒夜

山内 練よ。あなたの心の奥の深い悲しみと絶望を、そして泥にまみれながらも決してなくすことのない美しく澄んだ愛を、私はしっかり受け止めました―。

柴田よしきの代表作「RIKOシリーズ」と「花咲慎一郎シリーズ」に登場する男妾あがりのヤクザ、山内 練。そして同じく「RIKOシリーズ」に登場する麻生龍太郎。この二人の出会いとある事件の秘密が解き明かされるとともに、同時進行で一つの殺人事件の犯人探しが始まります。

上下二段に書かれた672ページの大作ですが、練や麻生龍太郎にまつわる真実が知りたくて、結末が知りたくて、分厚い本をバッグに入れ、電車の中でも打ち合わせまでの少しの空き時間にも、ひたすら読み続けました。

山内練と麻生龍太郎が最初に登場した作品は、柴田よしきの2作目「聖母の深き淵」ですが、この「聖なる黒夜」は、38作目の作品で、6年の時を経て出版されています。これは、2作目を書いたときから、すでに着想があったということなのでしょうか? この壮大な仕掛けに圧倒されるとともに、柴田よしきさんの力量に敬服します。

ところで、この作品は、今までのシリーズを知らない方にも、独立したミステリーとして十分読み応えのあるものになっていますし、練と龍太郎のラブストーリーとも言えると思います。

中山可穂の作品に描かれるビアンの恋愛もそうですが、この作品での男性同士の恋愛も、ヘテロの場合以上に切なくて官能的に思えるのはなぜでしょう。ビアンでもバイセクシュアルでもない私だけれど、何かこういう世界が崇高とさえ思えてしまうのは、作家の筆力のせいなのでしょうね。

kyoko0707k at 19:03│Comments(3)TrackBack(1) 本のこと 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 柴田よしき『聖なる黒夜』文庫化  [ mariの遊楽40life ]   2006年11月24日 18:55
柴田よしきさんの『聖なる黒夜』が文庫化されました。 印象的な作品で、単行本のとき一気に読んだ記憶があるのですが、今回は通勤や出張先に持って歩き、何日もかけてじっくり読みました(写真は出張時の車窓です)。 この作品は柴田よしきさんの他の作品、女刑事RIKOシリーズ....

この記事へのコメント

1. Posted by mari   2006年08月01日 18:12
こんにちは! お久しぶりです。
『聖なる黒夜』、読まれたのですね。
RIKOシリーズとハナちゃんシリーズの二つの環の要のような、それでいて番外編のような、不思議な作品ですよね。
この『聖なる黒夜』の発刊当時、抽選で短編のオマケ本が当たったそうです。
今後文庫化されるなら、その短編も収録してほしいなと、願っています。
2. Posted by sally   2006年08月01日 18:18
>mariさん!お久しぶりです。

知りませんでした! 何ですか、そのおまけ本とは!
文庫化、そろそろなんじゃないでしょうか。練(&麻生)のことが書いてあるなら、ぜひ収録してほしいです。
この「聖なる黒夜」は、どうしても文庫が待ちきれなくて買ったのですが、文庫になったら、また買って読み返したいです(だけど、上下2巻になりますかね?)

mariさんと柴田作品について語れるなんてうれしいです♪
この夏はお忙しいとのことですが、どうか体調を崩されませんようにお祈りしています!
3. Posted by 柴田よしき   2006年08月06日 17:40
たまたま、仕事で検索をしていて、ブログを読ませていただきました。
拙作「聖なる黒夜」をお読みいただき、ありがとうございました。

「聖なる黒夜」の構想は、「女神の永遠」を横溝賞に応募する前から持っていたもので、受賞後第一作として、一度書きかけたこともあります。が、当時はまだ、この物語を書き上げるだけの筆力がなく、棚上げして、「聖母の深き淵」を発表しました。

今月より、角川書店の携帯小説のサイトで、「聖なる黒夜」の少しあと、警察を辞めて私立探偵となった麻生と、山内との日々を綴る新シリーズもスタートいたします。時系列的には「聖母の深き淵」の前、ということになります。
そちらもよろしければ、どうぞ。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔