2006年06月30日

井上夢人「おかしな二人 岡嶋二人盛衰記」に今の自分を重ねる

おかしな二人―岡嶋二人盛衰記

先月、「2005年版 この文庫がすごい!」ミステリー&エンターテインメント部門第1位という帯にひかれて読んだ、岡嶋二人の99%の誘拐。そんなにうまくいく?と思いながらも、ぐいぐい読ませておもしろく、誰も殺されたりしないところも後味がよくて、「やー、もっと早くに読んでおけばよかったぁ」と思ったくらい。

それが、岡嶋二人という作家の作品を読んだ初めてだったのですが、岡嶋二人は、すでにミステリー好きの方なら周知のように、徳山諄一と井上夢人による共作筆名です。この「おかしな二人」には、この二人の出会いから共作を辞めるまでの歴史のようなものが綴られていて、これまで発表された作品が二人によってどのように作られたかまで種明かしされているのだから、おもしろくないはずがありません!

ネタバレのところもあるので、もっと岡嶋二人の作品を読んでから、この本を読んでもよかったかもしれませんが、私はこの本を読んだことで、かえって「岡嶋作品」への興味がわいたような気がします。

実は、今、私自身も某専門誌への記事を書くにあたって、彼らのようにastyさんと二人でチームを組んで取材・構成・執筆などを行っています。

もちろん、記事には執筆者を二人の連名にしているので、「二人でひとり」というわけではないのですが、ある意味、仕事の仕方は、徳山・井上組と同じなんですね。彼らの場合は、徳山諄一がアイデア出しを担当し、執筆するのは井上夢人のみ。私たちの場合は、取材は二人でするけれど、記事のポイントやアイデアのようなものは、astyが出し、最終的な執筆は、sallyが担当。とても似ています。

井上夢人が言うには、黄金期の二人の仕事の仕方は、徳山からアイデアが出されたら、その後で納得の行くまで、何日も時間をかけて話し合い、話し尽くしたところで、井上がそれを作品に仕上げる…というやり方だったと。それは本当に素晴らしいことだったと。だからこそ、一人ではできないような、ミステリ作品が生まれたのだと。だんだん売れっ子になるにつれて時間がなくなっていき、「話し合い」の時間がなくなって、やがて二人の間にひずみがおきて、決裂してしまうのですが…

何か1つのことを複数でやっていくことのメリットは、「1×人数」になることではなくて、相乗効果で限りなくアイデアが広がり、内容の密度も濃くなっていくことにあるのではと思います。それには、納得のいくまで話し合うこと、意見を出し合うことが大切なはず。一方で、仕事の仕方のバランスが崩れたときには、一人で何かを行う以上にストレスがたまり、危ういことになってしまうに違いありません。

こういうやり方は初めてだけれど、お互いに刺激を与え合いながら、いい仕事をして結果を出したいなと、この本を読んであらためて決意したsallyです。

kyoko0707k at 14:23│Comments(0)TrackBack(0) 本のこと | 仕事のこと

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