2005年10月15日

鷺沢萌「私の話」

創刊25周年を迎えて装丁など斬新で思わず手にとりたくなるようなものに生まれ変わった河出文庫から出版された鷺沢萌さんの「私の話」を読みました。

私の目には都会的でスタイリッシュな作家さんだというふうに映っていて、自ら命を絶ったのはどうしてだろうと不思議だったのですが…

これまで彼女の作品を2冊くらいしか読んでいなかった私は、この、鷺沢萌“最初で最後の私小説”を読んで、何だか打ちのめされた思いになりました。朝鮮半島の血が1/4ほど、混ざっていたことも、田園調布の裕福な家庭に育ちながら、学生時代に父が事業に失敗してその家を追われたことも、“血”のことを知って、韓国に留学したことも、20代前半に結婚・離婚の経験があったことも、何も知らなくて、ただただ呆然としてしまったのでした。

祖母の秘密を作品の中で明かしたことで、どれだけ祖母が傷ついていたかを知ったときから、まるで十字架を背負ったように、自分を追い詰めていったように思います。彼女は「駆ける少年」(泉鏡花文学賞受賞作品)の中で、父のことも題材にしています。

50代の若さで亡くなった森瑤子さんが、作家の仕事とは、自分や家族をさらしものにして、自らを切り刻んでいくこと…というような内容のことをエッセイに書かれていましたが、鷺沢さんの心の中もこんな気持ちだったのでしょうか。そんなに自分を追い込まなくてもいいのにと思うのは、やっぱりただの傍観者だからでしょうか。

鷺沢さんの作品を、これから少しずつ遡って読んでみたいと思っています。

私の話


kyoko0707k at 02:27│Comments(4)TrackBack(0) 本のこと 

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この記事へのコメント

1. Posted by moran   2005年10月15日 12:31
私も彼女がなくなったとき,ショックでした。

才能がありすぎるというのはときに,こういう悲しいことを引き起こすものかと。。。

森瑶子さんは,ほとんど全部読んでいます。
作家とは根も葉もない本当のことをネタに話をつむぎだす仕事のことを指すそうです。

私,情事が一番すきかな。初めて手にしたのは,大学生のとき。おしゃれでかっこよくて,ひたすらあこがれました。
2. Posted by moran   2005年10月15日 12:32
訂正。
根も葉もあるうそだっていってたかな(^^;?
3. Posted by sally   2005年10月16日 23:51
moranさんが森瑤子さんの作品を読んでいたとは!
私も、森瑤子さんの作品全部読んでるし、本棚の一番上のスペースが森瑤子作品専用になっているほど、大切にしています。
亡くなった後に、お父さんが著した「森瑤子・わが娘の断章」と、娘さんが著した「小さな貝殻」も読みました。
家族がどんなふうに彼女をとらえていたのかを知りたくて。

私の場合、子育てに追われて、都会のおしゃれな雰囲気とは究極の世界にいたとき、ひとときの夢を与えてくれたのが森瑤子さんの作品だったような気がします。それに情事に代表されるようなヒリヒリとする女の気持ち、まるで我がことのように分かりましたから。

今、書店には彼女の作品がずいぶん減ってしまって残念です。
4. Posted by moran   2005年10月17日 14:22
パスタ,盛大ですね(^^!

森さんのおかげで,サガンの作品もほとんど読みましたよ。
二人の作品は,とっても孤独でさびしい。

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