2005年09月07日

貫井徳郎「殺人症候群」

文庫にして1000円、総頁数:720ページの大作「殺人症候群」、読了です。
「失踪症候群」「誘拐症候群」の前二作は、この「殺人症候群」を書くためにあったのだと言い切れるほどの、力作だったと思います。

逆に言えば、前二作を読んでいない人には、環の率いる特殊チームの人間関係や、それぞれが心の奥に持った闇のことなどが把握できていないため、感動が薄いかもしれません。

それにしてもテーマが重くて、出てくる場面が残虐で、読むのに体力のいる作品でした。犯罪被害者より、加害者の人権が守られてしまう現実。特に加害者が少年であればなおさら…

最愛の息子を、娘を、愛する人を罪の意識さえない少年たちに殺された者たちの気持ちを考えるとき、この作品こそが、貫井徳郎のデビュー作のタイトル、『慟哭』にふさわしいのではと思ってしまいました。終盤、響子を抱きかかえて咆哮する鏑木渉の心を思うとき、涙が止まらなくて困りました。

「心臓移植を待つ息子のために、次々に殺人に手を染める看護婦」の逸話など、若干未消化な部分もありましたが、読者に答えをゆだねる形で終わったラストもよく、読み応えがあったと思います。

折りしも、今日、「山形マット死事件」の元生徒側の上告を退ける判決が出ました。12年間闘い続けた父親は、息子を殺されただけでなく、その後でどれだけのものを失ってきたのだろうと胸が痛みます。


殺人症候群


kyoko0707k at 17:29│Comments(2)TrackBack(0) 本のこと 

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この記事へのコメント

1. Posted by mari   2005年09月09日 12:33
3冊読破、お疲れ様でした〜!
3冊目は特にしんどいですよね。でもわたし、このシリーズ好きなんです・・・(暗い?)。
実際に起きている悲惨な事件を考えると、被害者家族の救済については(乃南アサさんなども作品で描いていますが)、現実にも大きな課題だと思ってしまいます。
2. Posted by sally   2005年09月09日 12:57
mariさん、今日は涼しいですね!
いやいや、本当にしんどかったです。息子がもしこんな目にあって殺されたりしたら…と考えるだけで胃が縮み、その後の展開に登場人物たちと同じ気持ちになって怒り、震え、悲しみにくれました。
響子と渉の行い(そして倉持も)は、決して正当化するものではないけれど、「じゃあ、どうすればいいの?」と。
「冷徹な環」VS「怒りに燃える倉持」との教会での場面でも、私は圧倒的に倉持を応援していました(倉持の勝ちでいいのですよね?)
mariさんに教えてもらわなかったら、3部作読破ならなかったかも。好きな本の傾向がばっちりなので、また教えてください!

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