2005年08月18日

柴田よしき「聖母の深き淵」

一昨日から胃の調子が悪くて背中も痛み、不調です。
…で、ベッドでうつらうつらして、目が覚めると本を読むというひたすらグータラな2日間を送ってしまいました。

7月末の殺人的な忙しさの後、柴田よしき作品をまとめてAmazonに注文したので、読む本はたくさんあり、それはそれでうれしい休暇みたいな感じですが、このしわ寄せが明日&来週に怒涛のように押し寄せると思うと怖いです…

さて、辛い、痛いとうめきつつ読んだ1冊目は「聖母の深き淵」。横溝正史賞を受賞した「RIKO―女神の永遠」から始まるRIKOシリーズの第2弾。第一作に比べてプロット作りが巧みだし、ストーリー展開にも磨きがかかっているような印象を受けました。それに加えて、ジェンダーへの問題提起など、柴田さんの訴えたいものがより明確になっているようです。

春日組の若頭・山内練と、元刑事・麻生龍太郎の二人の関わりは、まだ深い謎を含んでいて興味深い…それにしても、悪魔のような山内練のことを憎む気持ちになれないのはどうしてなんでしょうね。このあたり、第3作の「月神の浅き夢」を読むと、とてもよくわかるのですが、これだけの長編を書きながら、さらに次の作品への伏線をきちんと用意しているところが柴田よしきさんのすごさだと思わざるをえません。

それに、例の「ハナちゃんシリーズ」にまで、ちゃんと春日組が存在し、山内練も斎藤も登場する…。柴田さんの頭の中には、彼女が構築した新宿2丁目の街と、そこに住む人々がいつもいて、そこをちょっとのぞいては、主人公ごとに視点を変えて、その街で起こった出来事を綴っている…そんなふうに思えてなりません。

だから、読者の私たちの頭の中にも、いつのまにか明確な作品世界が構築されて、続編が出るたびにポンとその世界に入っていけるんですよね。
聖母(マドンナ)の深き淵


kyoko0707k at 17:52│Comments(0)TrackBack(0) 本のこと 

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